NJM2035のデータシートによれば,MPX出力(9ピン)は 200 mVp-p で, 電源電圧が 1.5 V であることから, 変調回路のゲインは変調の深さを考慮にいれない場合,5倍程度が限界です. 秋月のオリジナル回路では,B-C間に 100 kΩ (R10)の抵抗が入っていて, 帰還が掛かっているのですが,MPX出力とB間の抵抗が 1 kΩ (R8)ですから, 数十倍のゲインがあります. ここでは,B-C間の抵抗を 4.7 kΩ (R10)にすることにより, ゲインを下げています. これに伴い,MPX出力につながる抵抗R8と, パイロット信号出力につながる抵抗R9をデータシートの推奨値 (それぞれ 2 kΩ, 150 kΩ)にしています(図1).
次に,入力部の改造ですが, NJM2035の入力端子は,電流入力となっており, 恐らくオペアンプで言う反転入力となっているのでしょう. この端子には適切なバイアスが掛かっており, また内部にはゲインを定める帰還抵抗がつながっていると考えられます. したがって,この端子は直流分を遮断する C を付けなけらばならず, データシートの推奨回路でも C が最初につながっています. 半固定抵抗を回して発振するのも, このピンが抵抗経由で接地されているからだと思います.
本来は,データシートにあるように, 抵抗を経由して可変抵抗の2ピンに入力し,3ピンからNJM2035につなげると, プリエンファシスの時定数に大きな影響がでないのですが, 秋月の基板のパターンをできるだけ生かすため, C2のかわりに 47 kΩ の抵抗を入れ, 半固定抵抗を 5 kΩ にして, プリエンファシスを 51 kΩ (R2)と 0.001 μF (C3)にし, R3を 4.7 kΩ にします. これによりプリエンファシスのブースト量を決める抵抗値は, 半固定抵抗を絞り切ったときにR3の 4.7 kΩ となり, 半固定抵抗を全開にしたときにR3 + VRの 9.7 kΩ 以下となり, 可聴範囲内の影響はほぼ無視できる程度になります. 直流カットのコンデンサは,MIC-LINEの切り替えジャンパの所に入れるか, ジャンパからNJM2035に至るパターンをカットして入れるとよいでしょう(図2). R-LINE側も同様に改造します.
また,サブキャリア抑圧調整用の半固定抵抗を入れます(図3).
使用した部品は以下のとおりです.
品名 | 数量 | 備考 |
5 kΩ 半固定抵抗 | 2 | |
50 kΩ 半固定抵抗 | 1(0) | キットに付いているものを流用 |
2 kΩ 1/4W 炭素被膜抵抗 | 1 | |
4.7 kΩ 1/4W 炭素被膜抵抗 | 3 | |
47 kΩ 1/4W 炭素被膜抵抗 | 2 | |
51 kΩ 1/4W 炭素被膜抵抗 | 2 | |
150 kΩ 1/4W 炭素被膜抵抗 | 1 | |
0.001 μF マイラコンデンサ | 2 | |
10 μF 10 V以上 電解コンデンサ | 2(0) | キットに付いているものを流用 |