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2 ロードライン

電圧増幅段のロードラインを図1に示します. 青色の線が 220 kΩ の直流ロードラインで, 緑色の線が 220//470 = 150 kΩ の交流ロードラインです. フルパワー時,入力の尖頭値が 0.9 V を超えるので, 初速度電流の影響を避けるには, もう少しバイアスを深くしたほうがよいのではと思います.
図 1: 電圧増幅段のロードライン
\includegraphics{figs/6SC7_ll.ps}

出力段のロードラインを図2に示します. 緑色の線がプレート電圧とプレート電流の関係を表わしており, この場合,入力は -24 V から 24 V を加えています. 差動出力段ではカソードの電圧が変動するため, ロードラインは弓なりになります. 青色の線は kΩ のシングル動作のロードラインです. 茶色の線は,プレート電流に対応したカソード電圧です. カソードの電圧は,21.3 V から 26.1 V まで変動します.

図 2: 出力段のロードライン
\includegraphics{figs/6SC7-6AH4_ll.ps}

出力段の伝達特性を図3に示します. 横軸は上側の球のグリッド電圧で,下側の球には位相が逆の電圧が加わっています. 赤い色の線が上側の球のプレート電圧で, 青い色の線が下側の球のプレート電流です.

図 3: 出力段の伝達特性
\includegraphics{figs/6SC7-6AH4_trans.ps}

最大出力時のカソード電圧を求めるには, 片方の真空管に設定した電流がすべて流れ, もう一方はカットオフした状態を考えます. この状態の時,電流が流れている真空管の(対カソード)グリッド電圧は, ロードラインと共通カソード電流(ここでは 62.5 mA)が交わる点から求められ, ここでは約 -2 V です. カットオフしている真空管のグリッド電圧は,約 -50 V です. このとき,両グリッド間で 50 - 2 = 48 V の入力が加わっています. それぞれの真空管には 48/2 = 24 V の入力が加わります. しかし,電流が流れる方の真空管のグリッド電圧は,動作点の -21.3 V から -2 V に 19.3 V 変化しているはずですし, カットオフしている方のグリッド電圧は,-21.3 V から -50 V に -28.7 V 変化しているはずです. 入力信号( $ \pm$24 V)とグリッド電圧の差を調整するようにカソードの電圧が上昇します. すなわち, 24 - 19.3 = 4.7 V または 28.7 - 24 = 4.7 V だけカソード電圧が上昇します. ここでは,カソード電圧の上昇によってプレート電圧が下がる効果を考えていませんが,カソード電圧の変化は数ボルトなので,ここで説明した方法である程度の推定はできるでしょう.


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Ayumi Nakabayashi
平成19年7月1日