出力段のロードラインを図2に示します. 緑色の線がプレート電圧とプレート電流の関係を表わしており, この場合,入力は -24 V から 24 V を加えています. 差動出力段ではカソードの電圧が変動するため, ロードラインは弓なりになります. 青色の線は 4 kΩ のシングル動作のロードラインです. 茶色の線は,プレート電流に対応したカソード電圧です. カソードの電圧は,21.3 V から 26.1 V まで変動します.
出力段の伝達特性を図3に示します. 横軸は上側の球のグリッド電圧で,下側の球には位相が逆の電圧が加わっています. 赤い色の線が上側の球のプレート電圧で, 青い色の線が下側の球のプレート電流です.
最大出力時のカソード電圧を求めるには,
片方の真空管に設定した電流がすべて流れ,
もう一方はカットオフした状態を考えます.
この状態の時,電流が流れている真空管の(対カソード)グリッド電圧は,
ロードラインと共通カソード電流(ここでは
62.5 mA)が交わる点から求められ,
ここでは約 -2 V です.
カットオフしている真空管のグリッド電圧は,約 -50 V です.
このとき,両グリッド間で
50 - 2 = 48 V の入力が加わっています.
それぞれの真空管には
48/2 = 24 V の入力が加わります.
しかし,電流が流れる方の真空管のグリッド電圧は,動作点の -21.3 V から -2 V に 19.3 V 変化しているはずですし,
カットオフしている方のグリッド電圧は,-21.3 V から -50 V に -28.7 V 変化しているはずです.
入力信号(
24 V)とグリッド電圧の差を調整するようにカソードの電圧が上昇します.
すなわち,
24 - 19.3 = 4.7 V または
28.7 - 24 = 4.7 V だけカソード電圧が上昇します.
ここでは,カソード電圧の上昇によってプレート電圧が下がる効果を考えていませんが,カソード電圧の変化は数ボルトなので,ここで説明した方法である程度の推定はできるでしょう.