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4 無帰還時の各部の波形

Vi = 0.74 V (実効値) kHz の正弦波を入力した時の各部の波形を示します. このときの出力は Po = 3.66 W, 歪率は THD = 2.77 % です. グラフの赤い線はV1aまたはV2, グラフの青い線はV1bまたはV3の電圧を表わしています.

4は,V1a, V1bのプレートの電圧です. 図5は,V1a, V1bのカソードの電圧です. 入力のほぼ半分の振幅の波形がカソードに現われます.

図 4: 6SC7のプレートの電圧
\includegraphics{figs/6SC7-6AH4_V12p.ps}
図 5: 6SC7のカソードの電圧
\includegraphics{figs/6SC7-6AH4_V12k.ps}

6は,V2, V3のグリッドの電圧です. これは,V1a, V1bのプレートの電圧を 0 V が中心となるようにシフトした波形になっています. 図7は,V2, V3のカソードの電圧です. 出力段は平衡ドライブされているので, カソードに現われる信号の周波数は,入力信号の2倍になっています. また,カソード電圧は無信号時に最低となり, 入力が加わるとそれ以上に上昇します. この回路の場合,カソード電圧が最低でも約 21 V あるので, トランジスタによる定電流回路を使えば, 定電流回路の帰路はアースでよいことになります.

図 6: 6AH4のグリッドの電圧
\includegraphics{figs/6SC7-6AH4_V34g.ps}
図 7: 6AH4のカソードの電圧
\includegraphics{figs/6SC7-6AH4_V34k.ps}

最大出力時には,カソード電圧が約 4 V 上昇します. 正味のグリッド電圧はその分差し引かれるので, グリッド電圧が 0 V になるまでフルスイングするのに必要な入力は 波高値で

$\displaystyle \mbox{無信号時のグリッド電圧(約 $21\,\V$)}$ +4 $\displaystyle \approx$ 25 V

となります1. 実効値では約 17.7 V です. この正味のグリッド電圧の波形は,図8のようになります. かなり歪んだ波形ですが,これにより6AH4のリニアリティの悪さが補正され, 出力にはかなりきれいな正弦波が現われます. 図9は,出力管のプレート電流の波形です. 図10は,8 Ω 出力端子の波形です.
図 8: 6AH4の正味グリッド電圧
\includegraphics{figs/6SC7-6AH4_V34gk.ps}
図 9: 6AH4のプレート電流
\includegraphics{figs/6SC7-6AH4_V34ip.ps}
図 10: 出力電圧
\includegraphics{figs/6SC7-6AH4_VO.ps}

一方のグリッドに +23 V, もう一方のグリッドに -23 V を加えた時に, 各部の電圧や電流がどう変化するかを表わしているのが図11です.

図 11: 無信号時と最大出力時の各部の電圧
\begin{figure}\input{figs/perche_pow}
\end{figure}

ここで,この図の数値とロードラインの関係を見てみましょう. 無信号時には,V3, V4とも図2の``O''点にあります. V3のグリッドに +23 V, V4のグリッドに -23 V を加えると, V3は``A''点に移動し,V4は``B''点に移動します. これらの点は緑色の線(差動出力段のロードライン)上に乗っていることがわかります.


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Ayumi Nakabayashi
平成19年7月1日