1.1 理想トランス

1.1のような, 一次巻数 N1 ,二次巻数 N2 のトランスを考えます.
図 1.1: 理想トランス
\begin{figure}\input{figs/se_trans}
\end{figure}
この理想トランスには,巻線抵抗や漏洩磁束はないものとします. このとき,一次電圧 e1 と二次電圧 e2 の比は, それぞれの巻数 N1 , N2 の比と等しくなります.

$\displaystyle {\frac{{e_1}}{{e_2}}}$ = $\displaystyle {\frac{{N_1}}{{N_2}}}$ = n (1.1)
ここで,n 巻数比(turns ratio)です.

これより,

$\displaystyle {\frac{{e_2}}{{e_1}}}$ = $\displaystyle {\frac{{N_2}}{{N_1}}}$ = $\displaystyle {\frac{{1}}{{n}}}$  
e2 = $\displaystyle {\frac{{e_1}}{{n}}}$  

つまり,一次巻線と二次巻線の電圧の比は,巻数の比と等しく, 二次巻線の電圧は,一次巻線の電圧を巻数比で割ったものになります.

次に,図1.2のように, 一次側に交流電源を,二次側に負荷抵抗 Z2 を接続した場合を考えます.

図 1.2: 負荷を接続した場合
\begin{figure}\input{figs/se_trans2}
\end{figure}
この場合,巻線抵抗や漏洩磁束はないものとしたので, 一次側で発生した磁束はすべて二次側に伝達されます. それぞれの磁束は,巻線に流れている電流に巻数を掛けたもの (アンペア回数)なので,

N1i1 = N2i2 (1.2)
となりますが,式(1.1)の関係より, 巻線の巻数と電圧の比は一定ですので,

e1i1 = e2i2 (1.3)
と表すこともできます. すなわち,一次側の入力電力と二次側の出力電力は等しくなります. これより, 一次巻線を流れる電流と二次巻線を流れる電流の比を求めると,
$\displaystyle {\frac{{i_1}}{{i_2}}}$ = $\displaystyle {\frac{{e_2}}{{e_1}}}$ = $\displaystyle {\frac{{1}}{{n}}}$ (1.4)
i1 = $\displaystyle {\frac{{1}}{{n}}}$i2 (1.5)

となり,巻数比の逆数となることがわかります.

ここで,一次側のインピーダンス Z1 を求めると,

Z1 = $\displaystyle {\frac{{e_1}}{{i_1}}}$ = $\displaystyle {\frac{{n e_2}}{{i_2/n}}}$ = n2$\displaystyle {\frac{{e_2}}{{i_2}}}$ = n2Z2 (1.6)
となり,一次側のインピーダンスは, 負荷インピーダンスに巻数比の2乗を掛けたものになります.

まとめると,

  1. 一次電圧と二次電圧の比は巻数比となる.
  2. 一次入力と二次出力は等しい.
  3. 一次側のインピーダンスは, 二次側の負荷インピーダンスに巻数比の2乗を掛けたものになる.
3のインピーダンスに関しては, 1, 2から導かれたものであることに注意しておきましょう.

理想トランスには周波数の影響を受ける要素がないため, 周波数特性はフラットになります.

ayumi
2016-03-07