アンプの電源は 15V程度ですが, これからファンタム電源の48Vを作る必要があります. 昇圧型のスイッチング電源でなんとかするのが手軽ですが, 通常のICでは40Vが限界のようです. アプリケーションノートを見ると,倍電圧整流を使ったファンタム電源の例があるので, これにならうことにします.
秋月電子通商で扱っているNJW4131を使ったものは,入力電圧の範囲が広いため, この整流部分のダイオードおよびコンデンサを取り外し, 代わりに倍電圧整流を追加することにします. 改造後の回路図を図1に示します.
電圧設定用の半固定抵抗VR1は,2倍の200k にします.スイッチング周波数は700kHzと高速なので, オーディオ帯域にはあまり影響しないと思いますが, スイッチング電源の入力と出力にLCフィルタを追加しています(L2, L3, C10). L2は1.5Aを流せるもの,L3は100mAを流せるものであれば良いと思います. これで,50mA程度の出力が取れます.
アンプ部の回路図を,図2に示します.
アンプ部は簡略化して,計装アンプのLT1167を使い, ゲインは0dBから40dBまで,10dBステップで可変できるようにしました. ゲインが低いとMHz域にピークができるので, C5によって差動の高域カットオフを100kHz程度にしています. 入力インピーダンスは,差動で10k となるようにしています.ゲインを高くすると出力にオフセットが出てくる恐れがあるので, LF411によるDCサーボを付加しました. 低域のカットオフは1Hz程度です.
ゲイン | 600kHz | 80kHz | 30kHz | IHF-A |
0dB | 99.0 V | 22.4 V | 13.2 V | 8.2 V |
10dB | 118 V | 29.5 V | 19.5 V | 13.2 V |
20dB | 158 V | 57.0 V | 38.0 V | 26.3 V |
30dB | 254 V | 142 V | 87.0 V | 63.0 V |
40dB | 530 V | 410 V | 246 V | 154 V |
帯域幅600kHz (この帯域幅で測定することはないと思いますが)では,100dBのダイナミックレンジが取れています.
どのくらいのノイズまで測定できるかを調べるため, 上記の値を入力換算にしてグラフ化したものを図3に示します.
ゲイン40dB,帯域幅30kHzで,入力換算ノイズは4.1 Vとなりますので, 10 V程度のノイズは十分に検知可能と思われます.なお,DCサーボをかけると,わずかにノイズが増えますが,グラフで見ると違いがわからない程度でした.
ゲイン0dB, 20dB, 40dBにおける周波数特性を,図4に示します.
20kHzまではほぼフラットで,C5による帯域制限をかけたため,それ以上の周波数ではゲインがなめらかに減少しています. ゲインが低いと高域にピークができるため,ゲインの減少が少なくなっています. ゲインが40dBでは,十分な負帰還が得られないため,ゲインの落ち込みが激しくなっています.ゲイン0dB, 20dB, 40dBにおける出力対歪率特性を,図5に示します.
ゲイン40dBでは明らかに初段の負帰還が足りていないようで, 特に10kHzの歪率が悪くなっています. ゲイン0dBでは,発振器の最大出力が2.37Vで,途中までしか測定できていませんが, 歪率がゲイン20dBの場合とそれほど違わないので, この歪率は,初段ではなく後段の差動アンプによるものと思われます. 10kHzで0.04%の歪がありますので, オーディオ用のアンプとしてはやや物足りない感じがします.ayumi