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1 ポータブル版

メモリーオーディオプレーヤーと併用できる, ポータブル版を作りました. 回路は,図1のとおりです.

portable_sch.png

図 1: ポータブル版の回路図
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電池の寿命を延ばすため,できるだけ消費電流を抑えました. FET差動アンプのテール電流は,2.6mAとしました. FETを選別しなくてもよいように, FETのソースにはバランス調整用の100Ωの半固定抵抗が入っています. 終段は,大パワーを出さない前提で, 2SC1815/2SA1015のコンプリメンタリ・エミッタフォロワとし, アイドル電流は3.7mAとしました.

ボリュームは,ALPSの9mmサイズ(RK097)の10kΩを使いました. 門田無線で買ったので,中点クリック付きです. 他の抵抗値やクリックなしが良ければ,あぼ電機にあります. ここには,Cカーブのボリュームなど,他店にないものがけっこうあります.

電池は,8.4V, 200mAHのニッケル水素充電池を使用しました. この電池の直流内部抵抗は4Ωで, 1kHzにおけるインピーダンスは約1.2Ωでした. この電池を20mA (0.1C)の定電流で放電したときの特性を, 図2に示します.

図 2: ニッケル水素充電池の放電特性
\includegraphics{portable/batt.ps}
約7.5時間で電圧が7Vに下がりました. 1セルあたりの放電終止電圧を1Vとすれば, 容量は148mAHとなります.

小型にするため,Olimexで両面基板を作成しましたが, これは,別の基板の空きスペースを使用したものです. 1日くらいでパターンを起こしたため,案の定,1箇所配線もれがありました.

ケースはタカチのMX2-8-13にしました.

HPA_portable_outer.jpg

図 3: ポータブル版の外観
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HPA_portable_inner.jpg

図 4: ポータブル版の内部
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1.1 シミュレーション

負荷を開放したときの, 無帰還とゲインを9dBに調整した場合の周波数特性を 図5に示します.

portable_sim_ac_1.png

図 5: 帰還ありとなしの周波数特性(シミュレーション)
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無帰還時のゲインは,19.7dB (9.7倍)です.

負荷抵抗を変化させた場合の周波数特性を 図6に示します.

portable_sim_ac_2.png

図 6: 負荷抵抗を変化させた場合の周波数特性(シミュレーション)
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RL = 15 Ωの低域のカットオフ周波数は,4Hz程度です.

68Ωの負荷に1V出力時の波形を図7に示します.

portable_sim_tran.png

図 7: 1V出力時の波形(シミュレーション)
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歪率は,0.451%です.

出力インピーダンスの特性を図8に示します.

portable_sim_Zo.png

図 8: 出力インピーダンス特性(シミュレーション)
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中域の出力インピーダンスは,2.45Ωです.

1.2 特性

歪率および残留雑音の測定は,オーディオアナライザーMAK-6581を使い, 歪率測定時には,80kHzのローパスフィルタを使用しています.

負荷開放時のゲインを9dB (2.83倍)に調整した時の特性です. 総消費電流は,約19mAでした.

負荷開放時の出力電圧対歪率特性を図9に示します.

図 9: 負荷開放時の出力電圧対歪率特性(左:左チャネル,右:右チャネル)
\includegraphics[scale=0.8]{portable/dist_RLinf.ps}

負荷抵抗の違いによる出力電圧対歪率特性を図10に示します.

図 10: 負荷抵抗を変化させた場合の出力電圧対歪率特性
\includegraphics[scale=0.8]{portable/vo_dist_RL.ps}
負荷抵抗が低くなると,低レベルの歪率が顕著に悪化します. どうもアイドル電流が少なすぎるようで, この回路の場合,アイドル電流が3.7mAですから, 実効値で2.6mAまでA級動作します. その時の出力電圧は,
負荷(Ω) 15 22 33 47 68
出力電圧(V) 39.2m 57.6m 86.3m 123m 178m
であり, これは歪率が0.03%時の出力電圧に相当します.

負荷抵抗の違いによる出力電力対歪率特性を図11に示します.

図 11: 負荷抵抗を変化させた場合の出力電力対歪率特性
\includegraphics[scale=0.8]{portable/po_dist_RL.ps}
実用的な最大出力は,負荷抵抗にあまり左右されず,30mW程度となりました.

負荷抵抗の違いによる周波数特性を図12に示します.

図 12: 負荷抵抗を変化させた場合の周波数特性
\includegraphics[scale=0.8]{portable/freq_RL.ps}
無帰還時のゲインは9.8倍(19.8dB)で,負帰還量は10.8dBです.

出力インピーダンスの周波数特性を図13に示します.

図 13: 出力インピーダンスの周波数特性
\includegraphics[scale=0.8]{portable/Zo.ps}
中域における出力インピーダンスは,約3Ωです.

1V出力時のクロストーク特性を図14に示します.

図 14: クロストーク特性
\includegraphics[scale=0.8]{portable/crosstalk.ps}
電源コンデンサの容量が少ないのと,デカップリング抵抗が小さいため, 低域で少し漏れているようです. 高域は問題ありません.

残留雑音は,帯域幅600kHzで, 電池駆動時に両チャネルとも25.8$ \mu$V, スイッチング式のACアダプタ(12V, 1A小型)使用時で46.5$ \mu$Vでした.

68Ωを負荷にしたときの方形波応答を, 図15に示します.

p_RL68.jpg

図 15: 方形波応答(左 10kHz,右 100kHz)
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オーバーシュートもなく,素直な波形です.
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Ayumi Nakabayashi
平成25年12月30日