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4 試聴

SACDプレーヤSCD-EX6から直接ヘッドホンアンプに接続して, ヘッドホンはSONY MDR-CD900STで行いました. 比較のために,プレーヤのヘッドホン出力も使用しました. -12dBの1kHzの正弦波の出力が, ヘッドホンを接続した場合に48mVとなるようにレベルをセットしました. 試聴した音楽のジャンルは,バロック,ロック,ボーカルです.

プレーヤのヘッドホン端子は, 高域が曇るようで,すっきりとしません.

一方,一連のヘッドホンアンプでは, 高域が良く伸びており,シンバル類が明瞭に聞こえます. また,打楽器の音が特に生き生きとしています. タムの音に張りがあり,マリンバ等も音が弾む感じがします. ヘッドホンアンプ間の違いは,判別できませんでした.

このような試聴結果の原因を探るため, ヘッドホンを接続した状態で,周波数特性を取ってみました. 結果を,図81に示します.

図 81: ヘッドホン負荷時の周波数特性
\includegraphics{figs/freq_HP_load.ps}

プレーヤのヘッドホン端子では,80Hz以下で減衰しており, 90Hzに1.5dB程度のピークがあります. また3.3kHzあたりに1dBのピークがあり, 7kHzあたりから高域がダラダラと下がっています.

一方,ヘッドホンアンプの周波数特性は,まったくといってよいほどフラットです.

プレーヤのヘッドホン端子の出力インピーダンス特性を測定してみました. 結果を図82に示します.

図 82: SCD-XE6の出力インピーダンス特性
\includegraphics[scale=0.8]{figs/Zo_SCD-XE6.ps}

低域から中域にかけては,3.6〜4.5Ωで一定ですが, 数kHzより高域では出力インピーダンスが顕著に高くなっていきます. 低域まで出力インピーダンスが一定なことから, 出力コンデンサのない,両電源のアンプが用いられていると予想されます. 高域のインピーダンスの上昇は, 100$ \mu$H程度のインダクタによるものと思われます.

高域の出力インピーダンスの上昇により, ヘッドホン出力が下がることになります. 低域では出力インピーダンスがフラットなので, 低域のレベルの下降は,意図して作り込まれたもののようです.

SCD-XE6の残留雑音は,以下の通りでした.

チャネル 600kHz 80kHz 30kHz A特性
L 5.6mV 5.0mV 0.90,mV 0.23mV
R 6.7mV 5.6mV 0.90,mV 0.23mV
ヘッドホン出力はおまけのようなものでしょうが, もう少しノイズを減らしてもらいたいものです.

ヘッドホンのインピーダンス特性も測定しました(図83).

図 83: ヘッドホンのインピーダンス特性
\includegraphics[scale=0.8]{figs/HP_Z.ps}
MDR-CD900STは,90Hzと360Hzと3.3kHzにピークがあり, SCD-XE6に接続すると,その周波数にピークが生じます. 一方,40Hz以下ではインピーダンスがほぼフラットなので, SCD-XE6の低域のレベルの下降は, ヘッドホンに起因するものではないと確認できました.

同一のユニットを使っていると言われているMDR-CD900STとMDR-7506ですが, MDR-7506のほうがピークの周波数が低く, 低音が豊かであることを裏付けています.

ノイズキャンセリングヘッドホンのMDR-NC60は, ノイズキャンセリングをOFFにしたときは, 低域でどんどんインピーダンスが上昇する不思議なカーブを描いています. また,インピーダンスが100Ωとやや高めです. ノイズキャンセリングをONにしたときは, 中域まで約43Ω一定で, 高域になると20Ω程度に下がります.


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Ayumi Nakabayashi
平成25年12月30日