今回試作した回路を,図162に示します.
R2, R5は抵抗の記号になっていますが,1mAの定電流ダイオードを使用します. 使用した定電流ダイオードのピンチオフ電流は,1.05mAでした.
負荷を変えた場合の出力電圧対歪率特性を,図164, 165に示します.
負荷が変わっても歪みの傾向はあまり変わらず,ほぼ一定の値を示します. 負荷が33Ω以上であれば,Chu Moyのほうが歪率が低いですが, 15Ωの負荷では,nabe氏の回路のほうが歪率が低くなります.負荷抵抗の違いによる周波数特性を図166に示します.
1MHzを超えてからの特性が乱れています.残留雑音は,以下のとおりです.
600kHz | 80kHz | 30kHz | A特性 |
11.5V | 3.7V | 2.5V | 1.2V |
負荷開放時の方形波応答を,図167に示します.
上下が非対称なリンギングが生じています. 2200pFまでの容量負荷に対して発振しませんでした.
負荷を変えた場合の出力電圧対歪率特性を,図168, 169に示します.
無負荷時の特性が非常に悪化していますが,これは発振によるものです. 10kHzの歪率が顕著に低くなっていますが, 最大出力電圧が低くなっています. エミッタフォロワ(ダイアモンドバッファ)は電源電圧まで動作させられないためです.負荷抵抗の違いによる周波数特性を図170に示します.
1MHzを超える高域にピークができています. 方形波応答を調べたところ,無負荷時には発振していました.残留雑音は,以下のとおりです.
600kHz | 80kHz | 30kHz | A特性 |
12.4V | 4.1V | 2.8V | 1.4V |
方形波応答を,図171に示します.
負荷開放では発振が生じており,容量負荷にも弱いようです.
負荷を変えた場合の出力電圧対歪率特性を,図172, 173に示します.
最大出力電圧は,原回路よりも大きくなっており, LME49721のレールツーレール動作が非常に強力なことを示しています. また,歪率は原回路よりも低くなっており, 原回路ではダイアモンドバッファがオペアンプの負荷となって 特性を悪化させていることがわかります. ただし,10kHzの歪率だけは,ダイアモンドバッファを付けた場合の方が低くなっています.負荷抵抗の違いによる周波数特性を図174に示します.
やはり高域が暴れていますが, 小容量のみを負荷した場合でも発振には至りません.残留雑音は,以下のとおりです.
600kHz | 80kHz | 30kHz | A特性 |
10.4V | 4.1V | 2.6V | 1.4V |
方形波応答を,図175に示します.
純容量負荷は,470pFが限界です. オーバーシュートはやはり上下非対称です.
負荷が68Ωの場合, 1kHzでは, 最大出力電圧まではダイアモンドバッファを使用したほうが歪率が低くなります. それを超えると原回路の歪みが低く, nabe氏の目的が達成されているようです. しかし,ダイアモンドバッファが負荷となっているため, 原回路の最大出力はオペアンプのみの場合より低くなっています. 90Hzでも,この傾向は変わりません. 10kHzでは,一貫して原回路の歪率が高くなっています.
負荷が33Ωの場合も,全体の傾向は68Ωとあまり変わりません.