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はじめに

時間的に変化する信号を回路に与え, その振る舞いを解析する方法には,

があります.

交流解析は,信号として単一の周波数の正弦波を与えたときの, 定常的な(=ある程度時間が経過して,状態が変化しなくなった時の)回路の振る舞いを解析するものです. 過渡解析は,変化する任意の信号を与えたときの回路の振る舞いを解析するものです. この2つには,密接な関係がありますが, ここでは前者の交流解析のみを取り上げます.

アンプの設計との関連では, 交流解析は,ゲインや位相の周波数特性を調べることであり, 過渡解析は,方形波を入力して,その出力波形を観測することに相当します.

ここでは,線形回路(電圧源,電流源,抵抗,コンデンサ,インダクタのみで構成される回路)を扱います. 真空管や半導体などの能動素子は非線形な性質を持っています. 例えば,ダイオードなら順方向には電流が流れ, 逆方向にはほとんど電流が流れません. しかし,順方向にある程度の電流を流しておけば, それに小さな信号を加えた場合, 線形の素子として十分に近似することができます. 真空管やトランジスタのアンプの場合, 信号が小さければ歪みの発生もわずかであり, 線形の電圧源や電流源で近似できます. このため,線形回路の解析であっても,応用範囲は広いのです.

ここでは,負帰還を含むアンプの設計に必要な知識のみを扱うので, 一般の理論書に載っているような, 素子に蓄えられるエネルギーや消費される電力などは扱いません.

これから先の記述には,数式が多く登場します. 必要な数学のレベルは,高校2年程度の三角関数,微積分です. しかし,数式と図(グラフ)とシミュレーションを関連づけて 説明していこうと思っていますので, 三角関数,微積分を理解する必要はありません. それに,三角関数,微積分は,原理を説明するために使うだけで, 実際の計算には,ほとんど使いませんので安心してください.

演習には,回路シミュレータとしてCircuitMaker Student Versionを, 計算ソフトとしてR1を使いますが, PSpiceやMicrosoft Excel等を使っても同じ結果が出せるでしょう.


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Ayumi Nakabayashi
平成19年12月8日