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1 コンデンサ,コイル

ここでは,コンデンサ,コイルに加えた電圧と,流れる電流の関係を調べます. 微分・積分の式が出てきますが, これは後で出てくる記号計算の根拠を示すためであって, 実際の計算には使いません.

1.1 コンデンサ

1のように,コンデンサに一定の電流を流すと, コンデンサの極板に電荷が溜まっていき, 電極の電位差 vC が大きくなっていきます.
図 1: コンデンサに一定の電流を流す
\begin{figure}\input{figs/c_sch}
\end{figure}
このようすを,横軸に時間,縦軸に電位差をとってグラフで表すと, 図2のようになります. これは,1 F のコンデンサに 1 A の電流を流した場合です.
図 2: コンデンサに一定の電流を流した場合の電圧の変化
\begin{figure}\input{figs/c_tran}
\end{figure}

電流の大きさを変えてSPICEで検証してみましょう. シミュレーションの回路と結果は, 図3のようになります. SPICEでは,コンデンサの値として 1F と指定すると, フェムトファラドとして解釈されてしまいますので,注意してください. .IC が付いているのは, SPICEの過渡解析における電圧の初期値を指定するものです.

scr_C.png

図 3: コンデンサに一定の電流を流すシミュレーション
\begin{figure}.
%
\end{figure}

電流を増やす(図3のE, A, D)と,グラフの傾きが急になります. 電流を時間で積分したものが,電極の電位差であるといえます. 逆に,電極の電位差を時間で微分したものが,コンデンサを流れる電流といえます. 式で表すと,

vC = a$\displaystyle \int$iC dt (1)
iC = $\displaystyle {\frac{{1}}{{a}}}$ . $\displaystyle {\frac{{d v_C}}{{d t}}}$ (2)

となります.a は比例定数です.

次に,コンデンサの容量を変えてみます. コンデンサの容量が大きい(図3のC, A, B)と, 同じ電流を流しても電位差の上昇スピードが低くなります. したがって,上述の式の比例定数 a は,コンデンサの容量 C に反比例します. つまり,コンデンサにかかる電圧と電流の関係は, 次のようになります.

vC = $\displaystyle {\frac{{1}}{{C}}}$$\displaystyle \int$iC dt (3)
iC = C$\displaystyle {\frac{{d v_C}}{{d t}}}$ (4)

この式は,正弦波だけでなく,任意の電圧,電流に関して成り立つ基本的な関係です.

1.2 コイル

4のように,コイルに一定の電圧をかけると,流れる電流は時間とともに増えていきます.
図 4: コイルに一定の電圧をかける
\begin{figure}\input{figs/l_sch}
\end{figure}
このようすを,横軸に時間,縦軸に電流をとってグラフで表すと, 図5のようになります.
図 5: コイルに一定の電圧をかけた場合の電流の変化
\begin{figure}\input{figs/l_tran}
\end{figure}
これは,1 H のコイルに 1 V の電圧をかけた場合です.

電圧の大きさを変えてSPICEで検証してみましょう. シミュレーションの回路と結果は, 図6のようになります. SPICEでは,電源とコイルを直結すると, 直流では無限大の電流が流れてしまいますので, 微少な抵抗(ここでは 1 μΩ)を入れます.

scr_L.png

図 6: コイルに一定の電圧をかけるシミュレーション
\begin{figure}.
%
\end{figure}

電圧を増やす(図6のE, A, C)と,グラフの傾きが急になります. 電圧を時間で積分したものが,流れる電流であるといえます. 逆に,コイルを流れる電流を時間で微分したものが, コイルの両端の電圧であるといえます. 式で表すと,

iL = b$\displaystyle \int$vL dt (5)
vL = $\displaystyle {\frac{{1}}{{b}}}$ . $\displaystyle {\frac{{d i_L}}{{dt}}}$ (6)

となります.b は比例定数です.

次に,コイルのインダクタンスを変えてみます. インダクタンスが大きい(図6のC, A, B)と,同じ電圧をかけても電流の上昇スピードが低くなります. したがって,上述の式の比例定数 b は,コイルのインダクタンス L に反比例します. つまり,コンデンサにかかる電圧と電流の関係は, 次のようになります.

iL = $\displaystyle {\frac{{1}}{{L}}}$$\displaystyle \int$vL dt (7)
vL = L$\displaystyle {\frac{{d i_L}}{{dt}}}$ (8)

コンデンサの場合と同様に, この式は正弦波だけでなく,任意の電圧,電流に関して成り立つ基本的な関係です.
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Ayumi Nakabayashi
平成19年12月8日