next up previous
Next: 3 P-G帰還回路のオープンゲイン Up: P-G帰還の謎を解く Previous: 1 P-G帰還回路


2 P-G帰還回路のクローズドループゲイン

このとき,入力信号 ei, グリッドに掛かる信号 eg, 出力信号 eo の 関係を図示すると,図2のようになります.
図 2: P-G帰還の信号とフィードバック抵抗
\begin{figure}\input{figs/pg2}
\end{figure}

入力端子と出力端子の間の電圧は,ei + eo で, これが Rs + Rf の両端に加わっていることになります. 信号が加わっても常に 0 V になっている点があり, それは,Rf を 1 : A に内分した点です. A は負帰還が掛かっていない場合のゲインです. 入力信号 ei は,RsRf/(1 + A) で分割され eg となって グリッドに加わります.

eg = $\displaystyle {\frac{{\frac{1}{1+A}R_f}}{{R_s+\frac{1}{1+A}R_f}}}$ei (1)
プレートには eo = Aeg の出力が現われます.

eo = Aeg = A$\displaystyle {\frac{{\frac{1}{1+A}R_f}}{{R_s+\frac{1}{1+A}R_f}}}$ei (2)
これらより,負帰還を掛けた場合のゲイン Af は,
Af = $\displaystyle {\frac{{e_o}}{{e_i}}}$ = A$\displaystyle {\frac{{\frac{1}{1+A}R_f}}{{R_s+\frac{1}{1+A}R_f}}}$  
  = $\displaystyle {\frac{{A R_f}}{{(1 + A) R_s + R_f}}}$ = $\displaystyle {\frac{{A R_f}}{{R_s + R_f + A R_s}}}$  
  = $\displaystyle {\frac{{R_f}}{{R_s + R_f}}}$ . $\displaystyle {\frac{{A}}{{1 + A \frac{R_s}{R_s + R_f}}}}$ (3)

RsRf による分圧回路によって減衰された信号が, 通常の負帰還の掛かったアンプに加わっている, と解釈できます.

通常の負帰還と同様に, $ \beta$ = Rs/(Rs + Rf) とおくと,

A = (1 - $\displaystyle \beta$)$\displaystyle {\frac{{A}}{{1 + A\beta}}}$ (4)
となります.

2.1 重ねの理による解析

P-G帰還では,入力信号と帰還信号は,グリッドの場所で加算されます. グリッドに生じている正味の電圧は, 重ねの理を使うと,簡単に求めることができます.

まず,入力信号だけを考えます. このとき,出力電圧は0として,グリッドに生じる電圧を求めます. 図3 (a)より, グリッドにおける入力電圧 ei' は,

ei' = $\displaystyle {\frac{{R_f}}{{R_s + R_f}}}$ei (5)
となります.
図 3: 重ねの理による解析
\begin{figure}\input{figs/pg4}
\end{figure}

次に,出力信号だけを考えます. 入力電圧を0として,グリッドに生じる帰還電圧を求めます. 図3 (b)より, グリッドにおける帰還電圧 ef は,

ef = $\displaystyle {\frac{{R_s}}{{R_s+R_f}}}$eo (6)
となります.

グリッドにおける入力電圧 ei' から帰還電圧 ef を引いたものが, 正味のグリッド入力 eg になり, その A 倍が出力 eo になります.

eo = Aeg = A(ei' - ef) (7)

2つの図を重ね合わせると,図3 (c)のようになります. すなわち,帰還率が $ \beta$ = Rs/(Rs + Rf) の負帰還増幅器に, ei' の入力を加えたとみなすことができます.


next up previous
Next: 3 P-G帰還回路のオープンゲイン Up: P-G帰還の謎を解く Previous: 1 P-G帰還回路
Ayumi Nakabayashi
平成19年12月3日