UL接続のプレート特性は,KT-88や7591などを除いては発表されていません. また,プレート特性が発表されていても, 特定のプレート電圧でなければ活用できません. この節では,発表されている多極管接続や三極管接続のプレート特性図から UL接続のプレート特性図を作成する方法を考えます.
ウルトラリニア接続(以下UL接続とします)の回路を,図3.1に示します.
出力トランスの一次巻線のうち,
電源側から
の位置にスクリーングリッドのタップがあるとします.
は,通常0.4から0.5の間から選ばれます.
= 0
とすれば通常の多極管接続で,
= 1
とすれば三極管接続になります.
このとき,スクリーングリッドには,
静止時のスクリーン電圧に加え,
プレートに現れた信号の
倍の電圧がかかることになります.
したがって,プレート電圧 Ep
とスクリーングリッドの電圧 Eg2
の関係は,
静止時のプレート電圧(電源電圧)を Ep0
とすると,
図3.2は,6L6-GCのプレート特性図です.
スクリーングリッドの電圧は,50V から 400V まで 50V きざみになっています.
今,静止時のプレート電圧を
Ep0 = 250 V
,
= 0.43
とすると,
スクリーン電圧が
Eg2 = 300 V
となるのは,
式(3.1)を変形して,
Ep = Ep0 + ![]() |
(3.2) |
Ep = 250 + ![]() |
(3.3) |
Ep | 17.4 | 134 | 250 | 366 | 483 | 599 |
Eg2 | 150 | 200 | 250 | 300 | 350 | 400 |
これらのプレート電圧のところに対応するスクリーングリッド電圧を記入し, 垂線を引きます.例では青い字と線で表しています. これらの垂線と,対応するスクリーングリッド電圧の特性曲線の交点をつないでいくと, UL接続時のプレート特性が描けます.例では赤い曲線で示しています.
図3.3に,スクリーングリッド電圧が250Vと400Vのプレート特性図を示します. 左側のグラフから,プレート電圧が250V (電源電圧)のときのプレート電流を読みとります. グリッド電圧が 0 V , -20 V , -40 V のプレート電流を読みとると,
Eg (V) | 0 | -20 | -40 |
Ip (mA) | 188 | 41 | 1 |
前節の表より,UL接続の場合,スクリーングリッド電圧が400Vになるのは, プレート電圧が599Vの時です. 右のグラフで,このプレート電圧における 各グリッド電圧に対応したプレート電流を求めます(点D, E, F). これらを線で結ぶと,UL接続のプレート特性が求まります.
この方法では,多くの点についてのデータを取れないので, プレート特性の曲がり方がほとんどわかりません. ここでは,二つの点を単に直線で結んでいます.
図3.4の点Aは, Eg = - 20 V , Ep = Eg2 = 300 V のプレート電流です. UL接続時に Eg2 = 300 V となるプレート電圧は366Vですが, この時のプレート電流はAとほとんどかわらないはずで, これは点A' で表されます. 同様にして, Ep = Eg2 = 200 V の電流(点B)を Ep = 134 V に記します(点B' ). このようにして写していった点を結ぶと赤い線となり,これがUL接続時のプレート特性です.
実際は,内部抵抗が無限大ではありませんので, 図の赤い細い線は右上がりになります. また,三極管接続時のプレート電流には, スクリーングリッドの電流も含まれていますので, それを補正(差し引く)したほうがより正しい値に近くなるでしょう.
出力トランスのP-SG間にはプレートに生じた信号電流のみが流れますが, SG-B間にはプレート電流に加えスクリーングリッド電流が流れます. このような場合には,プッシュプルの出力トランスの場合と同様に, P-SG間のインピーダンスとSG-B間のインピーダンスは一定ではなくなります.
図3.5の(a)にこの様子を示します.
一次側に加えられた電力は,各巻線の電圧と電流の積の和になります.
図でいうと,四角形の面積の和です.
これと同じ電力が生じるようにP-B間に一定の信号電流を流すと,(b)のようになり,
その電流は
ip + ig2
となります.
この状態では一次巻線に流れる電流が一定なので,SGタップを無視することができ,
通常のトランスと同じように一次インピーダンスが一定と考えることができます.
すなわち,UL接続のプレート特性図で出力などを検討する場合,
プレート電流に
ig2
を加えた特性図を描き,
一次定格インピーダンスのロードラインを引けばよいことになります.
図3.6に,6L6-GCの,
Ep0 = 250 V
,
= 0.43
のプレート特性図を示します.
赤い実線はプレート電流,緑の実線はスクリーングリッド電流です.
赤い破線は,スクリーングリッド電流を加味したプレート電流です.
また,三定数の一つ gm に関してですが, スクリーングリッド電圧を一定とすると, グリッド電圧を変えてもプレート電流とスクリーングリッド電流の比率は ほとんど変わらず,一定という性質があります. これより,スクリーングリッドの伝達コンダクタンス gmg2 は,
gmg2 ![]() ![]() |
(3.4) |
gm(UL) = gm + ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
(3.5) |
ayumi