3.2 UL接続のプレート内部抵抗

プレート電圧が $ \Delta$Ep 上昇したとき, プレート電流が $ \Delta$Ip 増えた場合, 多極管接続の内部抵抗 rp は,

rp = $\displaystyle {\frac{{\Delta E_p}}{{\Delta I_p}}}$ (3.6)
で定義されます. 6L6-GCの Eg2 = 250 V におけるプレート特性図の一部を, 図3.7に示します. 動作点Oは, Ep0 = 250 V , Eg0 = - 20 V です. この図において, $ \Delta$Ep はOBの長さ, $ \Delta$Ip はBAの長さです. 図より $ \Delta$Ip = 0.178 mA なので,この動作点における内部抵抗は,

rp = $\displaystyle {\frac{{10}}{{0.178}}}$ = 56.2 [kΩ] (3.7)
となります.
図 3.7: UL接続時の内部抵抗
\includegraphics{figs/UL_6L6plate.ps}

一次巻線に対するSGタップの比率を $ \beta_{{\rm SG}}^{}$ とします. この場合,プレート電圧が $ \Delta$Ep 上昇すると, スクリーングリッド(G2)の電圧は, $ \beta_{{\rm SG}}^{}$$ \Delta$Ep 上昇します. $ \beta_{{\rm SG}}^{}$ を一般的な値である0.43とし, $ \Delta$Ep = 10 V とすれば,G2は 0.43 x 10 = 4.3 V 上昇します.

G2の電圧が V 上がることは, コントロールグリッド(G1)の電圧が 1/μg1-g2 V 上がることと等価です. ここで, μg1-g2 は,G1-G2間の増幅率です3.1. したがって,プレート電圧が $ \Delta$Ep 上がったときのプレート電圧とプレート電流の関係は, グリッド電圧が $ \beta_{{\rm SG}}^{}$$ \Delta$Epg1-g2 上がった特性曲線で表されます. この例の場合, μg1-g2 = 7.73 ですので,等価的なグリッド電圧の上昇分 $ \Delta$Eg は,

$\displaystyle \Delta$Eg = $\displaystyle {\frac{{\beta_{\rm SG} \Delta E_p}}{{\micro_{g1{\rm -}g2}}}}$ = $\displaystyle {\frac{{0.43 \times 10}}{{7.73}}}$ = 0.556 [V] (3.8)
となります. このグリッド電圧の上昇に対して,プレート電流は gm$ \Delta$Eg だけ増えます. この増分は,図3.7のACの大きさです.

これより,UL接続の場合,プレート電圧が $ \Delta$Ep 上昇したとき, プレート電流は,

$\displaystyle \Delta$Ip(UL) = $\displaystyle \Delta$Ip + gm$\displaystyle {\frac{{\beta_{\rm SG} \Delta E_p}}{{\micro_{g1{\rm -}g2}}}}$ (3.9)
だけ増えます. これは,図のBCの大きさです.

したがって,UL接続時の内部抵抗 rp(UL) は,

rp(UL) = $\displaystyle {\frac{{\Delta E_p}}{{\Delta I_p + g_m\frac{\beta_{\rm SG} \Delta E_p}{\micro_{g1{\rm -}g2}}}}}$  
  = $\displaystyle {\frac{{\Delta E_p}}{{\frac{\Delta E_p}{r_p} + g_m\frac{\beta_{\rm SG} \Delta E_p}{\micro_{g1{\rm -}g2}}}}}$  
  = $\displaystyle {\frac{{1}}{{\frac{1}{r_p} + g_m\frac{\beta_{\rm SG}}{\micro_{g1{\rm -}g2}}}}}$ (3.10)
  $\displaystyle \approx$ $\displaystyle {\frac{{1}}{{\frac{1}{r_p} + \frac{\beta_{\rm SG}}{r_{p\rm (T)}}}}}$  
  = rp//$\displaystyle {\frac{{r_{p\rm (T)}}}{{\beta_{\rm SG}}}}$ (3.11)

となります. 一般に rp $ \gg$ rp(T) なので, UL接続時の内部抵抗は,

rp(UL) $\displaystyle \approx$ $\displaystyle {\frac{{r_{p\rm (T)}}}{{\beta_{\rm SG}}}}$ (3.12)
と近似できます. また,式(3.10)をさらに変形すると,

rp(UL) = $\displaystyle {\frac{{r_p}}{{1+r_p g_m\frac{\beta_{\rm SG}}{\micro_{g1{\rm -}g2}}}}}$ = $\displaystyle {\frac{{r_p}}{{1+\micro \frac{\beta_{\rm SG}}{\micro_{g1{\rm -}g2}}}}}$ (3.13)
となります.

図の例の場合, gm = 3.873 mS なので,式(3.9)より,

$\displaystyle \Delta$Ip(UL) = 0.178 + $\displaystyle {\frac{{3.873 \times 0.43 \times 10}}{{7.73}}}$ = 2.332 [mA] (3.14)
ですから,UL接続時の内部抵抗 rp(UL) は,

rp(UL) = $\displaystyle {\frac{{10}}{{2.332}}}$ = 4.29 [kΩ] (3.15)
となります.

ここまでの計算では,スクリーングリッド電流の寄与分を考えていませんでしたが, これを考慮するには,gm の代わりに gm(UL) = gm(1 + $ \beta_{{\rm SG}}^{}$Ig20/Ip0) を使います.

rp(UL) = $\displaystyle {\frac{{1}}{{\frac{1}{r_p}+g_{m\rm (UL)} \frac{\beta_{\rm SG}}{\micro_{g1{\rm -}g2}}}}}$ (3.16)

ayumi
2016-03-07