三極管シングルの出力段にカソード帰還をかけた場合の回路を図3.8に示します. カソード-プレート間の巻数に対する,カソード帰還巻線の割合を とします.
内部抵抗を求めるため,仮にカソード-プレート間の電圧が Ep だけ上昇したと仮定します. このとき,カソード帰還巻線には Ep の電圧が生じ, アースを基準とすると,カソードの電位は Ep 下がります. これはグリッドに Ep の入力が加えられたことと同じですから, プレート電流は, gmEp 増えます. また,真空管の内部抵抗により,グリッド電圧が変わらなくても Ep/rp だけプレート電流が増えます. したがって,プレート電流の総増分 Ip(KF) は,
Ip(KF) = + gmEp | (3.17) |
rp(KF) = rp// | (3.19) |
さきほどと同じ6L6-GCの例で見てみましょう. プレート特性図を図3.9に示します. 負荷インピーダンスは 5 kΩ とし, 16 Ω の巻線でカソード帰還をかけることにします. 巻数比は : = 17.68 ですから, = 1/(17.68 + 1) = 0.05354 となります.
プレート電圧の変化を Ep = 10 V とすると, カソード帰還巻線に生じる電圧は, Ep = 0.05354 x 10 = 0.5354 V で,これがグリッドに加えられます. これによるプレート電流の増分ACは, gm = 3.873 mS なので, gmEg = 3.873 x 0.5354 = 2.07 mA となり, 内部抵抗 rp(KF) は,
rp(KF) = = 4.44 [kΩ] | (3.20) |
式(3.18)から求めると, rp = 56.2 kΩ , gm = 3.873 mS より, μ = 217.7 ですから,
rp(KF) = = 4.44 [kΩ] | (3.21) |
ここで6L6-GCの数値例を示しましたが, 多極管の場合,実際にはアースに対してカソードの電位が変動する一方, スクリーングリッドの電圧は一定なので, カソードを基準とするとスクリーングリッドの電圧が変動することになり, ごく弱いUL接続になっていることがわかります. ここでは,この影響を無視しています.
ayumi