6L6と同特性の5881を用いたシングルアンプで動作を検証します. 電源は定電圧電源を使用し,出力トランスの電源側が 250V になるようにします. したがって,プレート電圧は,出力トランスの巻線抵抗によるドロップ分だけ低くなります. 電圧増幅段は,5751による差動増幅回路です. 回路の詳細は,6CK4による各種出力段の比較実験を参照してください.
U-708 | OPT-10S | |
一次巻線抵抗 r1 (Ω ) | 195.4 | 263.7 |
二次巻線抵抗 r2 (Ω ) | 0.43 | 0.72 |
巻数比 | 23.85 | 23.92 |
一次インピーダンス(Ω ) | 4991 | 5253 |
KNF時一次インピーダンス Za (Ω ) | 5574 | 5642 |
KNF時P-Bインピーダンス Zp (Ω ) | 5271 | 5443 |
SGタップ比率(%) | 37.4 | 39.9 |
KNF比率 ![]() |
5.43 | 3.53 |
SGタップ比率やカソード帰還用巻線のインピーダンスが異なっているので, 特に出力インピーダンスの違いが現れてくることが期待できます.
基本的にはU-708の結果を紹介し, トランスによって大きく違いがある場合は,他のトランスの結果も記載します.
ip | = | プレート電流 | |
ig2 | = | スクリーングリッド電流 | |
r1 | = | 一次巻線抵抗 | |
r2 | = | 二次巻線抵抗 | |
r3 | = | 3次(KNF)巻線抵抗 | |
RL | = | 負荷抵抗(二次に接続) | |
n1 | = | 一次巻数 | |
n2 | = | 二次巻数 | |
n3 | = | 3次(KNF)巻数 | |
e1 | = | 巻線抵抗を除いた一次の電圧 | |
e2 | = | 巻線抵抗を除いた二次の電圧 | |
e3 | = | 巻線抵抗を除いた3次の電圧 | |
e13 | = | 巻線抵抗を除いたP-K間電圧 | |
ep | = | 一次の電圧 | |
et | = | 3次の電圧 |
e1 | = | ![]() |
|
e3 | = | ![]() |
i2n2 | = | ip(n1 + n3) + ig2n3 | |
i2 | = | ip![]() ![]() |
|
= | ip![]() ![]() ![]() |
||
= | ![]() ![]() ![]() ![]() |
これを式(3.71)に代入して,
e2 | = | ![]() |
|
e1 | = | ![]() ![]() |
|
e3 | = | ![]() ![]() |
プレート特性に引くロードラインのインピーダンスを求めます.
プレート特性上の電流は,ip'
に相当します.
この電流が流れたときに巻線抵抗を含む一次側に生じる電圧 ea
は,
ig2 = ip
とおくと,
ip = ip'/(1 +
)
,
ig2 =
ip'/(1 +
)
より,
ea | = | ipr1 + (ip + ig2)r3 + e1 + e3 | |
= | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
||
= | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
||
Za | = | ![]() ![]() ![]() ![]() |
図3.28のようなカソード帰還の特性図に引くロードラインのインピーダンス Zp
を求めます.
この特性図の電流は,やはり ip'
であり,
この電流が流れたときに巻線抵抗を含む一次側に生じる電圧 ep
は,
ep | = | ipr1 + e1 | |
= | ![]() ![]() |
||
= | ![]() ![]() ![]() ![]() |
||
Zp | = | ![]() ![]() |
同様にして,カソードに帰還される電圧は et
は,
et | = | (ip + ig2)r3 + e3 | |
= | ![]() ![]() |
||
= | ![]() ![]() ![]() ![]() |
||
Zt | = | ![]() ![]() |
![]() |
= | ![]() ![]() |
|
= | ![]() |
||
= | ![]() |
U-708の場合,
r1 = 195.4
, r2 = 0.43
, r3 = 5.84
,
n1 = 2.669
,
n2 = 0.1119
, n3 = 0.156
で,
= 2.564/36.92 = 0.06944
ですから,
![]() |
= | ![]() ![]() |
|
Za | = | ![]() ![]() ![]() ![]() |
|
= | ![]() ![]() ![]() ![]() |
||
Zp | = | ![]() ![]() |
|
= | ![]() ![]() |
||
Zt | = | ![]() ![]() |
|
= | ![]() ![]() |
||
![]() |
= | ![]() |
出力トランスにカソード帰還の専用巻線がないときに, カソード帰還をかけるには二次巻線で代用しますが, その場合のインピーダンスの計算は,専用巻線の場合と多少異なります. 等価回路は,図3.32のようになります.
二次巻線を2つに分割し,入力側(カソード側)と出力側に分離します. ここで,r1 | = | 一次巻線抵抗 | |
r2 | = | 二次巻線抵抗 | |
RL | = | 負荷抵抗 | |
n1 | = | 一次巻数 | |
n2 | = | 二次巻数 | |
i2 | = | 二次電流 |
二次に生じる電圧と負荷抵抗の関係から, 式(3.72)より,
i2n2 | = | ip(n1 + n2) + ig2n2 | |
i2 | = | ip![]() |
|
= | ![]() ![]() ![]() ![]() |
これを式(3.73)に代入して,
e2 | = | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
|
= | ![]() ![]() |
||
= | ![]() ![]() ![]() |
||
= | ![]() ![]() ![]() |
||
= | ![]() ![]() ![]() |
||
= | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
||
e1 | = | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
プレート特性に引くロードラインのインピーダンスを求めます.
プレート特性上の電流は,ip'
に相当します.
この電流が流れたときに巻線抵抗を含むPK間に生じる電圧 ea
を求めますが,
最初に,一次に生じる電圧 ep
と,
二次に生じる電圧 es
を求めます.
ep | = | ipr1 + e1 | |
= | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
||
= | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
||
= | ![]() ![]() ![]() ![]() |
||
Zp | = | ![]() ![]() |
|
es | = | (ip + ig2 - i2)r2 + e2 | |
= | - (i2 - ip - ig2)r2 + e2 |
es | = | - e2 + ![]() |
|
= | ![]() ![]() |
||
Zs | = | ![]() |
P-K間の電圧に対する帰還率
となります.
OPT-10Sの場合,
r1 = 263.7
, r2 = 0.72
,
n1 = 2.672
,
n2 = 0.1117
,
= 0.06944
ですから,
![]() |
= | ![]() ![]() |
|
Zp | = | ![]() ![]() |
|
= | ![]() ![]() |
||
Zs | = | ![]() |
|
= | ![]() |
||
Za | = | Zp + Zs = 5443.0 + 199.4 = 5642.4 [Ω] | |
![]() |
= | ![]() ![]() |
シミュレーションによる各部の電圧・電流は, 図3.33のようになります. プレート電流が 36.75mA となるバイアスは, -20.01078 V でしたが,実際は -18.2 V でした. これ以降の実験では, バイアスを -18.2 V で固定します.
モデルによるロードラインと伝達特性は, 図3.34のようになります.
青い破線は,静止時のロードラインで, 入力に 9.25Vp の信号を加え続けると, 2次歪みにより下降した平均プレート電圧が元にもどるため, 動作点はO'に移動し,ロードラインは実線のようになります.丸で示した点は,実機で観測された,オシロから読み取った値です. 特性曲線が,特にグリッド電圧が深いところでずれているようですが, おおむね合っているといえるでしょう. 下側の線はスクリーングリッド電流を表しています.
実機で観測されたロードラインと伝達特性を, 図3.35,3.36に示します. 各部の波形を, 図3.37,3.38に示します.
グリッド電圧が浅くなる Eg = - 15 V あたりから, 特にスクリーングリッド電流が急増しています. モデルでは,この増え方が多少ゆるやかになっているようです.
実際の出力トランスには巻線抵抗があるので, ダンピングファクターを計算するのは多少複雑になります. 今回の場合, rp = 55.664 kΩ で, 二次側から見た出力インピーダンス Zo は,
Zo = r2 + ![]() ![]() |
(3.74) |
実機では,8 Ω にて 1W, 0.01W, 0.1mW となるよう入力を調整し, 負荷を 4 Ω に切り替えて出力電圧の変化を測定しました. 出力インピーダンス Zo の求め方は,
Zo = ![]() |
(3.75) |
結果は以下の通りです.
8 Ω | 4 Ω | Zo |
出力電圧(V) | 出力電圧(V) | (Ω ) |
2.828 | 1.480 | 81.7 |
0.2828 | 0.1471 | 95.2 |
0.02832 | 0.01474 | 93.7 |
モデルによるロードラインと伝達特性は, 図3.40のようになります.
青い破線は,静止時のロードラインで, 入力に 15.65Vp の信号を加え続けると, 2次歪みにより下降した平均プレート電圧が元にもどるため, 動作点はO'に移動し,ロードラインは実線のようになります. このロードラインは,プレート電流のみのため,湾曲しています. スクリーングリッド電流にSGタップ比率を掛けたものを加えたのが点線のロードラインで, 直線になります.丸で示した点は,実機で観測された,オシロから読み取ったプレート電流です. 特性曲線が,特にグリッド電圧が深いところでずれているようですが, おおむね合っているといえるでしょう. 下側の線はスクリーングリッド電流を表しています.
実機で観測されたロードラインと伝達特性を, 図3.41,3.42に示します. 各部の波形を, 図3.43,3.44に示します.
グリッド電圧が -15 V あたりと -4 V のあたりで スクリーングリッド電流の増え方が急になります. モデルでは,この増え方が多少ゆるやかになっているようです.
今回の場合, rp = 57.882 kΩ , gm(UL) = 3.878 mS , μg1-g2 = 7.70 ですから, UL接続の内部抵抗 rp' は,
rp' = ![]() ![]() |
(3.76) |
Zo = r2 + ![]() ![]() |
(3.77) |
実機のON-OFF法による出力インピーダンスは以下の通りです.
8 Ω | 4 Ω | Zo |
出力電圧(V) | 出力電圧(V) | (Ω ) |
2.828 | 1.851 | 8.94 |
0.2828 | 0.1855 | 8.83 |
0.0283 | 0.01857 | 8.81 |
OPT-10Sの場合,
rp' = ![]() ![]() |
(3.78) |
Zo = r2 + ![]() ![]() |
(3.79) |
実機のON-OFF法による出力インピーダンスは以下の通りです.
8 Ω | 4 Ω | Zo |
出力電圧(V) | 出力電圧(V) | (Ω ) |
2.825 | 1.847 | 9.00 |
0.2826 | 0.1850 | 8.93 |
0.02823 | 0.01848 | 8.93 |
シミュレーションによる各部の電圧・電流は, 図3.45のようになります.
モデルによるロードラインと伝達特性は, 図3.46のようになります.
青い破線は,静止時のロードラインで, 入力に 20.01Vp の信号を加え続けると, 2次歪みにより下降した平均プレート電圧が元にもどるため, 動作点はO'に移動し,ロードラインは実線のようになります. このロードラインは,プレート電流のみのため,湾曲しています. スクリーングリッド電流を加えたのが点線のロードラインで, 直線になります.丸で示した点は,実機で観測された,オシロから読み取ったプレート電流です. 特性曲線が,特にグリッド電圧が深いところでずれているようですが, おおむね合っているといえるでしょう. 下側の線はスクリーングリッド電流を表しています.
実機で観測されたロードラインと伝達特性を, 図3.47,3.48に示します. 各部の波形を, 図3.49,3.50に示します.
グリッド電圧が -15 V あたりと -4 V のあたりで スクリーングリッド電流の増え方が急になります. モデルでは,この増え方が多少ゆるやかになっているようです.
今回の場合, rp = 61.395 kΩ , gm(UL) = 3.92 mS , μg1-g2 = 7.65 ですから, 三極管続の内部抵抗 rp' は,
rp' = ![]() ![]() |
(3.80) |
Zo = r2 + ![]() ![]() |
(3.81) |
実機のON-OFF法による出力インピーダンスは以下の通りです.
8 Ω | 4 Ω | Zo |
出力電圧(V) | 出力電圧(V) | (Ω ) |
2.830 | 2.129 | 3.93 |
0.2828 | 0.2126 | 3.94 |
0.02826 | 0.02125 | 3.94 |
シミュレーションによる各部の電圧・電流は, 図3.51のようになります.
モデルによるロードラインと伝達特性は, 図3.52のようになります.
青い破線は,静止時のロードラインで, 入力に 20Vp の信号を加え続けると, 2次歪みにより下降した平均プレート電圧が元にもどるため, 動作点はO'に移動し,ロードラインは実線のようになります. このロードラインは,プレート電流のみのため,湾曲しています. スクリーングリッド電流を加えたのが点線のロードラインで, 直線になります.丸で示した点は,実機で観測された,オシロから読み取ったプレート電流です. 特性曲線が,特にグリッド電圧が深いところでずれているようですが, おおむね合っているといえるでしょう. 下側の線はスクリーングリッド電流を表しています.
実機で観測されたロードラインと伝達特性を, 図3.53,3.54に示します. 各部の波形を, 図3.55,3.56, 図3.57に示します.
グリッド電圧が -15 V あたりで スクリーングリッド電流の増え方が急になります. モデルでは,この増え方が多少ゆるやかになっているようです.
カソード帰還の場合は,一次および3次の巻線抵抗は
真空管の内部抵抗に直列に入っており,
負帰還の作用によって減少します.
今回の場合,
rp = 57.166 kΩ
,
gm(UL) = 3.80 mS
,
μg1-g2 = 7.70
ですから,
カソード帰還の内部抵抗 rp'
は,
rp' | = | ![]() |
|
= | ![]() |
(3.82) |
Zo = r2 + ![]() ![]() |
(3.83) |
実機のON-OFF法による出力インピーダンスは以下の通りです.
8 Ω | 4 Ω | Zo |
出力電圧(V) | 出力電圧(V) | (Ω ) |
2.830 | 1.995 | 5.76 |
0.2828 | 0.2007 | 5.54 |
0.02829 | 0.02009 | 5.52 |
OPT-10Sの場合は,オートトランスとなるので, 出力インピーダンスを求める方法が異なります. 導出は省略しますが, 二次側から見た出力インピーダンス Zo は,
Zo = ![]() |
(3.84) |
Zo | = | ![]() |
|
= | ![]() |
実機のON-OFF法による出力インピーダンスは以下の通りです.
8 Ω | 4 Ω | Zo |
出力電圧(V) | 出力電圧(V) | (Ω ) |
2.826 | 1.919 | 7.17 |
0.2832 | 0.1933 | 6.96 |
0.02829 | 0.01931 | 6.95 |
低域の特性は,三極管接続,KNF,UL接続,多極管接続の順で悪くなります. 高域の特性は,KNFが良く,その他はほとんど差がありません.