当初,CR型トーンコントロールの前後に12AU7によるSRPP回路を 持ってくるつもりであったが,球数が多くなる割には出力インピーダンスが それほど低くならない(数 kΩ 程度)こと, 周波数特性がなかなか素直にならないこと, デフィートするよい方法がないことなどから, 検討の対象をNF型に切り替えた.
オリジナルのBax型は,高音用に中点タップ付きのVRが必要である. [1]によれば,中点タップ付きのVRを使わなくても, 3番端子(ブースト側)を高抵抗でアースしてグリッドの浮きを押さえればよいとの ことである. それならばいっそうのことLUX型にすれば, CRが減るし,デフィート用のスイッチが簡単になるのでは, ということで,手持ちの資料を探したが, [3]の12AX7のところに参考回路が出ていたのみである. Web上では,ぺるけさんのLUX SQ38FDの解析のページ(http://home.highway.ne.jp/teddy/tubes/ana/ana2.htm)に回路図が載っている. これらを参考にして,低域の可変範囲を多少狭め, 高域が上昇しっぱなしにならないように制限を加えてみた.
NF型の場合,高 gm 高 μ 管を使えば, 出力インピーダンスを 1 kΩ 以下にできる. 負帰還がかかっており,インピーダンスが低いため, クロストークの心配もそれほどないことから, 12AT7 を左右共通で使うことにする.
前段は,SRPPも検討したが, 出力インピーダンスを低くするため, 12AU7 による電流帰還 + カソードフォロワで行くことにした. ここに2段アンプ + 負帰還を使うとラインアンプ全体では位相が反転するし, 大掛かりになりすぎるため,採用を見送った. ゲインはあまり大きくなり過ぎないよう6倍程度とした.
フラットアンプの初段の動作点は, Ep0 = 118.9 V, Eg0 = - 6.24 V, Ip0 = 1.33 mA で, 三定数は, μ = 15.5, rp = 17.6 kΩ, gm = 880 μS で,負荷抵抗は 100 kΩ であるので, ゲイン A は,
A = 15.5 = 7.93 | (8) |
カソードフォロワの動作点は, Ep0 = 126.2 V, Eg0 = - 6.74 V, Ip0 = 1.32 mA で, 三定数は, μ = 15.4, rp = 17.9 kΩ, gm = 860 μS で,負荷抵抗は 100 kΩ であるので, ゲイン A は,
A = 15.4 = 0.929 | (9) |
Zo = //100 = 1.08 [kΩ] | (10) |
トーンコントロールの動作点は, Ep0 = 159.7 V, Eg0 = - 2.16 V, Ip0 = 2.63 mA で, 三定数は, μ = 55.9, rp = 19.4 kΩ, gm = 2890 μS で, 交流負荷抵抗は(プリアンプの負荷が 47 kΩ のとき) 22.4 kΩ であるので, オープンゲイン A は,
A = 55.9 30 | (11) |
図13にシミュレーションによるトーンコントロールの周波数特性を示す. ゲインは,出力開放で0.904倍( -0.875 dB)である.