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3 ポールが二つある回路に負帰還をかけた場合の特性

ポールが二つある回路に負帰還をかけた場合の特性は, p2p1 の比であるスタガ比 $ \alpha$ = p2/p1 と, 負帰還量 F によって定まります. 解析では,負帰還量ではなく還送比 T が用いられます. 負帰還量と還送比の関係は,

F = 1 + T        T = F - 1 (2)
です. したがって,20 dB の負帰還をかける場合は,F = 10 ですから,T = 9 となります.

負帰還をかけた後の特性は,減衰係数 $ \zeta$ というただ一つのパラメータに支配されます. $ \zeta$ をさまざまに変化させたときの周波数特性とステップ応答を, それぞれ図4と図5に示します. ステップ応答は,方形波を入力してオシロスコープで波形を観測することに対応しています.

図 4: 2次の伝達関数の周波数特性
\includegraphics{figs/nfb2_1.ps}
図 5: 2次の伝達関数のステップ応答
\includegraphics{figs/nfb2_3.ps}

$ \zeta$ = 1/$ \sqrt{{2}}$ のときが周波数特性がもっとも平坦で,バタワース特性と呼ばれます. このときステップ応答にはほんのわずかですがオーバーシュートが生じます. ステップ応答にオーバーシュートが生じないのは $ \zeta$ = 1 の場合ですが, 周波数特性を見ると,下降が始まる周波数が低くなってしまいます.

位相補償をする場合は,所定の量の負帰還をかけたばあいに希望する特性となるよう, 減衰係数を決め,それからスタガ比が導かれます. 減衰係数と還送比,スタガ比の関係は,表1のとおりです.

表 1: 減衰係数,還送比,スタガ比の関係
減衰係数 $ \zeta$ スタガ比 $ \alpha$ = p2/p1 位相余裕 $ \phi_{m}^{}$
0.5 T 51.8o
0.6 1.44T 59.2o
0.707 2T 65.5o
0.8 2.56T 69.9o
0.9 3.24T 73.5o
1.0 4T 76.3o
1.1 4.84T 78.6o



Ayumi Nakabayashi
平成17年6月16日