SRPPの上側の真空管の動作がわかったので, 下側の真空管V1と組み合わせた動作を考えましょう.
電源電圧 Ebb からB-A間の電圧を引いたものが, 下側のプレート電圧になります.
これをグラフで表すには, 図7などのグラフの緑色の線を, 左右をひっくり返して, 原点を電源電圧のところに持っていきます.
例として,V2とV1の動作点を同じとすると, V1の静止時のプレート電圧が 150.3 V でしたので, 電源電圧は, 150.3 x 2 + 6 = 306.6 V になります. V1を自己バイアスにすると,さらに 6 V 加算する必要があります.
負荷抵抗が RL = 47 kΩ の場合のグラフは, 図11のようになります. V1のロードラインは,水色の曲線になります.
図では, Eg0 = - 6 V のバイアスに対して,6V の入力を加えた場合の プレート電圧,プレート電流等を示しています.場所 | ei = - 6 V (B) | ei = 0 V (O) | ei = + 6 V (A) |
V1プレート(対アース) | 215.8 V | 150.3 V | 65.0 V |
V2カソード(対アース) | 218.7 V | 156.3 V | 75.3 V |
V2グリッド電圧 | -2.9 V | -6 V | -10.3 V |
V2プレート電圧 | 87.9 V | 150.3 V | 231.3 V |
V1プレート電流 | 1.89 mA | 4.00 mA | 6.84 mA |
V2プレート電流 | 3.22 mA | 4.00 mA | 5.12 mA |
出力電圧 | 62.4 V | 0 V | -81.0 V |
出力電流 | 1.33 mA | 0 mA | -1.72 mA |
Rl = (rp2//RL)(1 + gm2Rk2) + Rk2 | (27) |
RL' | = | rp2//RL = 10.81//47 = 8.79 [kΩ] | |
rp' | = | = = 3.74 [kΩ] | |
A | = | - μ1 = - 16.53 = - 11.60 | (31) |
グラフからゲインを求めると,
A = = - 11.95 | (32) |
SRPP回路の出力インピーダンス Zo は,図14のA-B間のインピーダンスですから,
Zo = rp'//rp2 | (33) |
出力をV2のカソードではなく,V1のプレートからとった場合の出力インピーダンスは,
式(28)より,
Zo | = | rp1//Rl | (34) |
Rl | = | rp2(1 + gm2Rk2) + Rk2 |
V1のグリッドに +1 V の入力を加えた場合を考えます.
このときグリッド電圧は Eg = Eg0 +1 = - 6 + 1 = - 5 V となり, 動作点はOから,V1のロードライン(水色の線)と Eg = - 5 V の交点Aに移動します. このときのV1のプレート電流の変化 i1 はCAで表され,rp1 | = | ||
Rl | = | ||
μ1 | = | BC + CO |
CA = i1 = | (35) |
このとき,V2のグリッドには eg2 = - i1Rk2 の(負の)信号が加えられ, V2の動作点はOからQに移動し, V2のプレート電流の変化(i2)と負荷から吸い出した電流(io)を加えたものが, V1のプレート電流の変化と等しくなります. V2のカソードは,点O'からA'に移動し,出力電圧は eo (O'C')になります. これはまた,V2のプレート電圧の変化(向きは逆)でもあり,直線TSの長さと等しいです. O'C'から eo を求めると,
eo = - i1Rl' = - μ1 | (36) |
io = = i1 | (37) |
Ru | = | = - | |
= | (39) | ||
= | = | ||
= | = | ||
= | (40) |
-1 | = | ||
2RL | = | Rl' | |
= | (rp2//RL)(1 + gm2Rk2) | ||
= | 1 + gm2Rk2 | ||
= | 1 + gm2Rk2 | ||
2rp2 +2RL | = | (1 + gm2Rk2)rp2 | |
2rp2 +2RL | = | rp2 + μ2Rk2 | |
2RL | = | μ2Rk2 - rp2 | |
RL | = | (41) |
これまでと同様の動作点でこの状況を示すと, RL = 6993 Ω となり,図16のようになります.
このときのV2の入力電圧 eg2 は,
eg2 | = | - μ1 | |
= | |||
= | |||
= | |||
= | |||
= | |||
= | |||
= |
eg2 = - = - | (42) |
RL = μ2Rk2 の場合,V2には信号電流が流れなくなります(i2 = 0).
i1 = - i2 となったときに,V1とV2には逆相の電流が流れることになり, プッシュプル動作をしているといえます. わかりやすいように,グラフでは - i2 を点線で示してあります. i1 の赤い線と - i2 の青い点線の交点がプッシュプル動作をしている点で, RL = (μ2Rk2 - rp2)/2 のときです.
このとき,V2の入力電圧 | eg2| はV1の入力電圧(1 V)をわずかに下回っています.
次に,V1とV2の負荷の大きさをグラフで示してみました(図18).
V1の交流的な負荷 Rl は,負荷 RL が低くなると, RL の45度線よりも大きくなります. 通常のカソード接地回路では,交流的な負荷は Rp//RL なので, 必ず RL より小さくなります(Rp はプレート負荷抵抗). これにより,SRPPでは重い負荷に対するゲインの低下が小さくなります. RL が大きくなると,Rl は rp2 + (μ2 +1)Rk2 に近づいていきます.
V2の交流的な負荷 Ru は,RL が大きいうちは正で, RL が小さくなると負になります. グラフでは,負の値を青い点線で示しています. プッシュプル動作をしているときは,Rl' = Ru となります.