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6 A47

A47と呼ばれているヘッドホンアンプは, 出力電流を増やすために, 通常の増幅段の出力と, その出力から入力をとるボルテージフォロワの出力を 抵抗で合成して出力するものです. 原回路は,http://www.headwize.com/projects/showfile.php?file=apheared_prj.htmのようです. この回路は,OPA2604のデータシートに記載されており, 40Ωの負荷に対して,2Vの出力が取り出せるとあります.

今回試作した回路を,図138に示します.

A47_sch.png

図 138: 試作したA47アンプの回路図
\begin{figure}.
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\end{figure}
原回路では,ゲインを決める抵抗に4.7kΩと10kΩを使用していますが, 今回はChu Moyアンプと同様に1kΩと2.2kΩを使っています. 帰還回路のインピーダンスが低いほど,浮遊容量の影響を受けないからです. また,OPA2134で非反転増幅器を構成するときには, 帰還抵抗の並列合成抵抗を2kΩ以下にするよう推奨しています. 同相入力によってオペアンプ入力段のFETの接合容量が変化し, それが歪みとなるからです.

A47_brd.jpg

図 139: A47アンプ基板
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\end{figure}

6.1 特性

電源は,$ \pm$4.5Vで動作させました.

6.1.1 ボルテージフォロワを使用しない場合

まず,R5を取り去り,IC1Aのみで動作させました.

負荷を変えた場合の出力電圧対歪率特性を,図140, 141に示します.

図 140: 負荷を変えた場合の出力電圧対歪率特性
\includegraphics[scale=0.8]{A47/single_dist.ps}
図 141: 各周波数ごとの負荷を変えた場合の出力電圧対歪率特性
\includegraphics[scale=0.8]{A47/single_dist_RL.ps}
出力に抵抗が入っていないChu Moyと比較すると, 負荷が重くなるにつれ,最大出力電圧が下がります. 同じ出力電圧における歪みは,大差ありません.

負荷抵抗の違いによる周波数特性を図142に示します.

図 142: 負荷を変えた場合の周波数特性
\includegraphics[scale=0.8]{A47/single_freq_RL.ps}
無負荷時のピークは,Chu Moyよりも大きくなっています. 負荷が重くなったときの高域の低下も,Chu Moyより大きくなっています.

残留雑音は,以下のとおりです.

600kHz 80kHz 30kHz A特性
22.1$ \mu$V 8.2$ \mu$V 5.2$ \mu$V 3$ \mu$V

68Ω負荷時の方形波応答を,図143に示します.

A47_single.jpg

図 143: 方形波応答(左 100kHz,右 100kHz, CL=1000pF)
\begin{figure}.\hfill.\par
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\end{figure}
容量負荷時にわずかにオーバーシュートが生じますが, すなおな波形です. 0.022$ \mu$Fまでの容量負荷に対して発振しませんでした.

6.1.2 ボルテージフォロワを追加した場合

負荷を変えた場合の出力電圧対歪率特性を,図144, 145に示します.
図 144: 負荷を変えた場合の出力電圧対歪率特性
\includegraphics[scale=0.8]{A47/double_dist.ps}
図 145: 各周波数ごとの負荷を変えた場合の出力電圧対歪率特性
\includegraphics[scale=0.8]{A47/double_dist_RL.ps}
ボルテージフォロワを使用しない場合にくらべて, 負荷が重くなったときの最大出力電圧が増えています. また,10kHzの歪みが約1/2に減っています. 1kHzの歪みも減っています. 最大出力電圧は,Chu Moyよりも少し高くなっています.

負荷抵抗の違いによる周波数特性を図146に示します.

図 146: 負荷を変えた場合の周波数特性
\includegraphics[scale=0.8]{A47/double_freq_RL.ps}
ボルテージフォロワを使用しない場合と比べて, 高域が伸びていますが, 無負荷時のピークも大きくなっています.

残留雑音は,以下のとおりです.

600kHz 80kHz 30kHz A特性
22.9$ \mu$V 8.5$ \mu$V 5.3$ \mu$V 3.3$ \mu$V

68Ω負荷時の方形波応答を,図143に示します.

A47_double.jpg

図 147: 方形波応答(左 100kHz,右 100kHz, CL=1000pF)
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傾向は,ボルテージフォロワを使用しない場合と同様ですが, 高域が伸びている分だけ,オーバーシュートが鋭くなっています. 0.022$ \mu$Fまでの容量負荷に対して発振しませんでした.

6.1.3 まとめ

比較がしやすいように, Chu MoyとA47のシングル(ボルテージフォロワなし)とダブル(ボルテージフォロワあり)の歪率特性を同じグラフ上に描きました(図148149).
図 148: Chu MoyとA47の歪率の比較(RL=68Ω)
\includegraphics[scale=0.8]{A47/A47_dist_comp_RL68.ps}
図 149: Chu MoyとA47の歪率の比較(RL=33Ω)
\includegraphics[scale=0.8]{A47/A47_dist_comp_RL33.ps}

負荷が68Ωの場合は, 最大出力電圧は,Chu MoyとA47のダブルでほとんど違いがありません. 1kHzでは,A47のダブルがわずかに歪率が低くなっています. それより低いレベルでの差は,残留雑音の違いによるため,本質的なものではありません. 90Hzでは,残留雑音のみで,歪みは計測できていません. 10kHzでは,A47のダブルの歪率が顕著に低く, Chu MoyとA47のシングルではほとんど違いがありません.

負荷が33Ωの場合は, 最大出力電圧は,わずかですがA47のダブルが高くなっています. 1kHzでは,A47のダブルの歪率がはっきりと低くなっているのがわかります. 90Hzでは,残留雑音のみで,歪みは計測できていません. 10kHzでは,A47のダブルの歪率が顕著に低く, Chu MoyとA47のシングルではまったくといってよいほど違いがありません.

6.2 位相補償

工事中.
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Ayumi Nakabayashi
平成25年12月30日