next up previous
Next: この文書について... Up: シングル出力段のパワーバンド幅 Previous: 低域のロードライン

最大出力時に何が起こるか

前節のロードラインに,静止時のプレート電圧,プレート電流を加えてやれば, 実際のロードラインとなります. ここでは,静止時のプレート電圧を Ep0 = 450 V, プレート電流を Ip0 = 80 mA としてみます. ここで Zp = 5 kΩ のロードラインを引いてやると,y軸との交点は,

Ep0 + Ip0Zp = 450 + 0.08 x 5000 = 850 [V] (18)
となります.

中域での最大出力時のOPT一次電圧の波高値は Ip0Zp = 400 V です. このときの ei は,

ei max = $\displaystyle {\frac{{r_p + Z_p}}{{Z_p}}}$eo max (19)
で, rp = 1 kΩ とすれば, ei max = 480 V です.

これらの条件から,中域で最大出力となるグリッド入力を加えたときの ロードラインを描くと,図7のようになります.

図 7: 最大出力時のロードラインの例
\includegraphics[]{figs/pbw_ll2_rp1.ps}

周波数が低い場合,プレート電流が負になってしまう部分が出てきます. 当然のことながら,プレート電流は負になれませんから,カットオフの状態になり,大きな歪みが発生してしまいます. プレート電流が大きくなる方に関しては,三極管ならプレート特性曲線が立っているので,ある程度は流すことができるでしょう. 五極管の場合,プレート特性曲線がほとんど水平なので,クリップが起こるでしょうが,それよりも先にプレート電流が0になるでしょう. したがって,ノンクリップの最大出力を制限するのは,プレート電流が正でなければならないという条件になります.

プレート電流の瞬時値が0に達した時, プレート電流の信号成分の波高値は Ip0 となっています. この条件を式(5)に入れてやれば,

| eo max| = | Z2Ip0|  
  = Ip0Zp$\displaystyle {\frac{{1}}{{\sqrt{1 + \frac{1}{\omega^2 T_2^2}}}}}$ (20)

ロードラインの軌跡を描くには,
ip = Ip0sin a (21)
eo = Ip0Zp$\displaystyle {\frac{{1}}{{\sqrt{1 + \frac{1}{\omega^2 T_2^2}}}}}$sin a + $\displaystyle \theta$ (22)

という関係を使います. このようにして描いたノンクリップ最大出力時のロードラインは図8のようになります.
図 8: ノンクリップ最大出力時のロードラインの例
\includegraphics[]{figs/pbw_ll3_rp1.ps}

この時の出力電力は eo max から求められ,

Po max = $\displaystyle {\frac{{\vert e_{o\max}\vert^2}}{{2Z_p}}}$ = $\displaystyle {\frac{{I_{p0}^2 Z_p}}{{2}}}$ . $\displaystyle {\frac{{1}}{{1 + \frac{1}{\omega^2 T_2^2}}}}$ (23)
となります. これをグラフで表すと,図9のようになります.
図 9: ノンクリップ最大出力の周波数特性
\includegraphics[]{figs/pbw_po_freq.ps}
この式からわかるように,出力が理論的な最大出力 Ip02Zp/2 の半分になるのは,周波数が 1/2$ \pi$T2 のときです.


next up previous
Next: この文書について... Up: シングル出力段のパワーバンド幅 Previous: 低域のロードライン
Ayumi Nakabayashi
平成15年9月7日