ダンピングファクター は, 規定の負荷を RL , アンプの出力インピーダンスを Zo とすると, 次の式で定義されます.
= | (2.34) |
負荷開放時と規定負荷時の等価回路は, 図2.24のようになるので,
eo | = | e | (2.35) |
el | = | e | (2.36) |
el | = | eo | |
(ro + RL)el | = | eoRL | |
roel | = | (eo - el)RL | |
ro | = | RL | (2.37) |
注意としては,多極管の無帰還アンプの場合, 負荷開放にすると非常に高い電圧が発生するので, 負荷開放時に歪まないようにレベルを調整します.
等価回路より,
e1 | = | e | (2.38) |
e2 | = | e | (2.39) |
e1 | = | e2 | |
e1RL2ro + e1RL1RL2 | = | e2RL1ro + e2RL1RL2 | |
(e1RL2 - e2RL1)ro | = | (e2 - e1)RL1RL2 | |
ro | = | ||
= | (2.40) |
数値例で確認します.
8 Ω
の負荷に対して 1.25V の出力が測定され,
16 Ω
の負荷に対して 2V の出力が測定されたとします.
この場合,
RL1 | = | 8 | |
RL2 | = | 16 | |
e1 | = | 1.25 | |
e2 | = | 2 |
と計算できます.
信号注入アンプの出力インピーダンスが十分に低い場合は, 図2.26(a)のように接続します. RL は被試験アンプの規定負荷インピーダンスとします. この場合,被試験アンプに流れる電流 i は,
i = | (2.41) |
Zo = = RL | (2.42) |
信号注入アンプの出力インピーダンスが高い場合は, 図2.26(b)のように接続します. ここで,r3 は信号注入アンプの出力インピーダンスです. R1 , R2 の値は, 被試験アンプの規定負荷インピーダンスを RL とすれば,
R1 + (R2//r3) = RL | (2.43) |
i = | (2.44) |
Zo = = R1 | (2.45) |
出力インピーダンスが ro で, 無負荷時のゲインが A のアンプを考えます(図2.27).
規定の負荷 RL をかけた時のゲイン AL は,
となります. パワーアンプでは,通常この値をゲインと呼んでいます.この例の場合,出力インピーダンスが ro なので, ダンピングファクターは,
= | (2.47) |
次に,出力の 倍の帰還をかけます. このとき,図より,
eo = Aed = A(ei - eo) | (2.48) |
eo | = | Aei - Aeo | |
(1 + A)eo | = | Aei | |
eo | = | (2.49) |
この状態で,規定の負荷をかけると,図より,
eo = Aed = A(ei - eo) = AL(ei - eo) | (2.52) |
eo | = | ALei - ALeo | |
(1 + AL)eo | = | ALei | |
eo | = | (2.53) |
このゲインから,パワーアンプにおける通常の意味での負帰還量 FL を求めると,
となり, 負荷を掛けたときの無帰還時のゲイン AL と帰還率 を用いて, 無負荷時と同様な式で算出されることがわかります. つまり,負帰還本来の定義から言えば,所定の帰還量となる を求めるためには, 無負荷時のゲインが必要なのですが, 負荷時に所定の帰還量となる を求めるのに,負荷時のゲインのみを考えればよいことになります.
Zo = | (2.56) |
ro の両端の電圧は, (1 + A)e ですから, 出力端子から流れ込む電流 i は,
i = | (2.57) |
この出力インピーダンスを用いて,
規定負荷に対する負帰還アンプのゲインを求めてみましょう.
無負荷時の負帰還アンプのゲインは式(2.50)で表され,
出力インピーダンスは式(2.58)となるので,
負荷時のゲインは,
AfL | = | Af = . = | |
= | = = | ||
= | (2.59) |
帰還後のダンピングファクターは,
= = = F = F . | (2.60) |
式(2.55)に,
式(2.46)を代入して,A
について解くと,
FL | = | 1 + A | |
A | = | FL - 1 | |
A | = | (FL -1) = (FL -1) . +1 | |
= | (FL -1) . +1 | (2.61) |
つまり,ダンピングファクターは,真の負帰還量(F )だけ改善されますが, 真の負帰還量を求めなくても, 式(2.63)によって負帰還後のダンピングファクターを求めることができます.
ここで数値例をあげましょう.
8 Ω
の負荷を掛けたときゲインが10倍で,
ダンピングファクターが0.1のアンプがあったとします.
すなわち,
AL | = | 10 | |
= | = 0.1 |
となります. 無負荷時のゲインは,式(2.46)を A について解いて,
です.
このアンプに 6 dB の負帰還を掛けます. 真の負帰還量は,式(2.62)より,
(21.6dB)となり,ダンピングファクターは12倍改善されて,1.2となります. 式(2.63)から負帰還後のダンピングファクターを求めると,
となり,一致します.
ayumi