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4 ミニアンプの製作

最終的な回路は,図31のようにしました. 出力トランスの1次インダクタンスが思いの外大きかったので, 低域のスタガー比を確保するため,初段のスクリーングリッドバイパスコンデンサを増やし,カップリングコンデンサを減らしました. また,出力段の電流が多いようでしたので,バイアス抵抗を 330 Ω に増やしました.

図 31: QUAD IIタイプミニアンプの回路(最終版)
\begin{figure}\input{quadm_sch_final}
\end{figure}
図 32: QUAD IIタイプミニアンプの回路(電源部)
\begin{figure}\input{quadm_ps_sch}
\end{figure}

4.1 製作

電源トランスには,東映変成器の40W絶縁トランス1を, ヒータートランスには同じく東映変成器の3Aのものを使いました. ケースは,タカチのUS-260LHを使用して, 真空管を横向きにマウントし,内部に納めることにしました.

quadm_outer1.jpg

図 33: ミニアンプの外観
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4.2 測定

4.2.1 入出力特性

図 34: ミニアンプの入出力特性
\includegraphics{figs/miniq_15p_io.ps}
予定通り,0.5 V の入力で 5 W の出力が得られました.

4.2.2 出力対歪率特性

図 35: ミニアンプの出力対歪率特性
\includegraphics{figs/miniq_15p_dist.ps}

4.2.3 周波数特性

図 36: ミニアンプの周波数特性(上:左,下:右)
\includegraphics{figs/miniq_15p_freq.ps}
位相補償が足りないため,高域に少々ピークが生じています.

quadm_15p_100_R.jpg

図 37: 方形波応答(右,100Hz)
\begin{figure}.\hfill.\par
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quadm_15p_1k_R.jpg

図 38: 方形波応答(右,1kHz)
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quadm_15p_10k_R.jpg

図 39: 方形波応答(右,10kHz)
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quadm_15p_10k_open_R.jpg

図 40: 方形波応答(右,10kHz,負荷開放)
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quadm_15p_clip_R.jpg

図 41: クリップ波形
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4.2.4 残留雑音

  左チャネル 右チャネル
補正なし 1.5mV 0.18mV
A補正 0.23mV 0.028mV
左チャネルの雑音が大きいですが, 真空管を差し替えた結果,左チャネルに使用したSylvaniaの6AU6のハムのようです. 右チャネルはGE製です.

4.2.5 クロストーク

図 42: ミニアンプのクロストーク特性
\includegraphics{figs/miniq_15p_crosstalk.ps}
Lチャネルの残留雑音が高いため,R$ \to$Lの特性が悪くなっています. L$ \to$Rは, 20 kHz で -75 dB と,かなりよい特性と言えます. 低域のほうも,10 Hz で -75 dB 確保できています. 平衡アンプですので,電源がプアでもこの程度の特性は楽に得られるようです.

4.2.6 出力インピーダンス,ダンピングファクター

図 43: ミニアンプの出力インピーダンス特性
\includegraphics{figs/miniq_15p_zo.ps}
図 44: ミニアンプのダンピングファクター
\includegraphics{figs/miniq_15p_df.ps}
左チャネルは残留雑音の影響で正しく測定できませんでしたので, 真空管を左右入れ替えて測定しています. 出力インピーダンスは 1 Ω 弱, ダンピングファクターは10弱となっています.

4.3 出力トランスの交換と位相補償の変更

残りの出力トランスをARITOさんから送っていただいたため, 右チャネルのG-2をG-18に交換しました. また,位相補償の容量を 22 pF にしました. さらに,使用するスピーカーにあわせて, パッシブ式のバスブースト回路を組み込みました. 初段の6AU6は,すべてGE製のものに変更しました.

バスブーストの回路を,図45に示します.

図 45: バスブーストの回路図
\begin{figure}\input{figs/bassboost_sch}
\end{figure}
これはインピーダンスを下げた最終回路のもので, 入力インピーダンスは約23.7kΩ,挿入損失は-9.8dBです.

4.3.1 入出力特性

図 46: ミニアンプの入出力特性
\includegraphics{figs/miniq_latest_io.ps}
前述のとおり,バスブースト回路により約1/3の損失があるため, その分感度が低くなっています.

4.3.2 出力対歪率特性

図 47: ミニアンプの出力対歪率特性
\includegraphics{figs/miniq_latest_dist.ps}
左右のノイズレベルの差が少なくなったため,歪率特性もほぼ揃いました.

4.3.3 周波数特性

図 48: ミニアンプの周波数特性(上:左,下:右)
\includegraphics{figs/miniq_22p_freq.ps}
48のように,高域のピークはなくなりました.

バスブーストの周波数特性を, 図49に示します.

図 49: バスブーストの周波数特性
\includegraphics{figs/miniq_bassboost.ps}
上昇量はほぼ正確に2dBステップとなっています.

4.3.4 残留雑音

  左チャネル 右チャネル
補正なし 0.303mV 0.355mV
A補正 0.0327mV 0.033mV

4.3.5 クロストーク

図 50: バスブースト付加後のクロストーク特性
\includegraphics{figs/miniq_crosstalk2.ps}
最初,バスブースト回路を適当に配線したら, 図50の青い線のように大幅に特性が悪化しました. フロントパネル側に右チャネルがあり, 6AQ5のプレートからの輻射を拾っているようです. また,ボリュームの奥側を左チャネルにしているため, 右チャネルの配線等からの信号を拾いやすくなっているようです.

バスブースト回路のインピーダンスを半分にし, さらにボリュームの手前側と奥側の配線を入れ替え, バスブーストからボリュームの配線にリボンケーブルを使って 左右の信号線の間にグラウンドを挟んだところ, 緑色のように特性が改善しました. バスブーストがない場合より,最悪で10dB程度の悪化に収まっています.

4.3.6 出力インピーダンス,ダンピングファクター

図 51: ミニアンプの出力インピーダンス特性
\includegraphics{figs/miniq_22p_zo.ps}
図 52: ミニアンプのダンピングファクター
\includegraphics{figs/miniq_22p_df.ps}


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Ayumi Nakabayashi
平成25年5月19日