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4 製作

出力トランスは, シングル用は手持ちの三栄無線KT-88SSMAのもの(1次インピーダンス 2.5 kΩ)を, プッシュプル用はタムラ製作所のF-2021 (1次インピーダンス kΩ)を使い, 適当なダミーロードを用いて 1次インピーダンスをそれぞれ 3.3 kΩ, 6.6 kΩ となるようにして使います. 出力トランスの損失が大幅に違いそうなので,出力を測定する際には1次側を測定することにします. それに先だって,正確な1次インピーダンスを測定しておきます.

シャーシは 250mmx150mmx40mm のものですが,板厚が薄く, トランスを3個も載せることができないため, 使用しない出力トランスは取り付けないでおくことにします.

出力管の端子は,チップジャックによりシャーシ上から電圧を確認できるようにしておきます. また,固定バイアスのVRも,シャーシ上から調整できるようにしています. シャーシ上の様子を図41に, シャーシ内の様子を図42に示します.

6CK4_test.jpg

図 41: テストアンプの外観
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6CK4_test3.jpg

図 42: テストアンプの内部
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初段の定電流ダイオードは,E-102を4本購入し,測定の上, もっとも 1 mA に近かった 1.07 mA のものを使いました. できれば電流値は 1 mA より少ないほうが,初速度電流や最大出力電圧の点で望ましいのですが,致し方ありません.

4.1 使用する真空管の選定(2002/12/30)

ARITOさんからは,6CK4を6本送っていただきました. No. 1とNo. 2がGE製のアルミクラッドプレート, No. 3がRCA製のアルミクラッドプレート, No. 4-6がRCA製のカーボンスートプレートです.

tube.jpg

図 43: 使用した6CK4(左よりNo. 1-6)
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この中から実験に使用するペアを選ぶため,特性を測ってみました. 結果は表1のとおりです.

表 1: 6本の6CK4の特性
No. 1 Ep = 250 V Eg = - 28 V Ip = 39.4 mA
GE Ep = 250 V Eg = - 27.61 V Ip = 41.67 mA
アルミクラッド $ \Delta$Eg = 0.5 V Ip = 45.0 mA
$ \Delta$Eg = - 0.5 V Ip = 39.04 mA gm = 5960 μS
$ \Delta$Ep = 5 V Ip = 46.33 mA
$ \Delta$Ep = - 5 V Ip = 36.9 mA rp = 1.06 kΩ
μ = 6.3
No. 2 Ep = 250 V Eg = - 28 V Ip = 46.07 mA
GE Ep = 250 V Eg = - 28.78 V Ip = 41.67 mA
アルミクラッド $ \Delta$Eg = 0.5 V Ip = 44.64 mA
$ \Delta$Eg = - 0.5 V Ip = 38.34 mA gm = 6300 μS
$ \Delta$Ep = 5 V Ip = 45.32 mA
$ \Delta$Ep = - 5 V Ip = 36.2 mA rp = 1.10 kΩ
μ = 6.93
No. 3 Ep = 250 V Eg = - 28 V Ip = 38.88 mA
RCA Ep = 250 V Eg = - 27.44 V Ip = 41.67 mA
アルミクラッド $ \Delta$Eg = 0.5 V Ip = 45.23 mA
$ \Delta$Eg = - 0.5 V Ip = 39.18 mA gm = 6050 μS
$ \Delta$Ep = 5 V Ip = 46.15 mA
$ \Delta$Ep = - 5 V Ip = 37.51 mA rp = 1.16 kΩ
μ = 7.02
No. 4 Ep = 250 V Eg = - 28 V Ip = 44.68 mA
RCA Ep = 250 V Eg = - 28.32 V Ip = 41.67 mA
カーボンスート $ \Delta$Eg = 0.5 V Ip = 45.20 mA
$ \Delta$Eg = - 0.5 V Ip = 38.22 mA gm = 6980 μS
$ \Delta$Ep = 5 V Ip = 45.56 mA
$ \Delta$Ep = - 5 V Ip = 36.54 mA rp = 1.11 kΩ
μ = 7.75
No. 5 Ep = 250 V Eg = - 28 V Ip = 38.23 mA
RCA Ep = 250 V Eg = - 27.41 V Ip = 41.67 mA
カーボンスート $ \Delta$Eg = 0.5 V Ip = 45.5 mA
$ \Delta$Eg = - 0.5 V Ip = 39.48 mA gm = 6020 μS
$ \Delta$Ep = 5 V Ip = 47.52 mA
$ \Delta$Ep = - 5 V Ip = 38.40 mA rp = 1.10 kΩ
μ = 6.62
No. 6 Ep = 250 V Eg = - 28 V Ip = 34.75 mA
RCA Ep = 250 V Eg = - 26.67 V Ip = 41.67 mA
カーボンスート $ \Delta$Eg = 0.5 V Ip = 44.92 mA
$ \Delta$Eg = - 0.5 V Ip = 39.23 mA gm = 5690 μS
$ \Delta$Ep = 5 V Ip = 46.0 mA
$ \Delta$Ep = - 5 V Ip = 37.55 mA rp = 1.18 kΩ
μ = 6.71

各サンプルの最初の行は,規格に載っている Ep = 250 V, Eg = - 28 V, Ip = 40 mA にどれだけ合っているかを調べるものです. 2行目は,今回のアンプの動作点である Ep = 250 V, Ip = 41.67 mA のときの グリッドバイアスを調べるものです. 3行目と4行目は動作点における相互コンダクタンス gm を調べるもので, プレート電圧を一定に保ちながら, グリッド電圧を動作点より $ \pm$0.5 V 変化させてプレート電流を測り, その差が gm となります. 5行目と6行目は動作点における内部抵抗 rp を調べるもので, グリッド電圧を一定に保ちながら, プレート電圧を動作点より $ \pm$V 変化させてプレート電流を測り, その差で 10 を割ったものが rp となります. 増幅率 μ は gmrp の積で求めています.

測定の結果からは,No. 3とNo. 5がかなり近い特性ですが, No. 5はゲッターが少なくなってきているため,実験に使うのは酷と考え, No. 1とNo. 3でペアを組むことにします.


4.2 出力トランスのインピーダンスの測定(2002/12/31, 2003/1/12)

既述のように,シングル用の出力トランスの公称インピーダンスは 2.5 kΩ, プッシュプル用のインピーダンスは kΩ ですが, ダミーロードの値を変更することにより,1次インピーダンスを変えて使用します. ダミーロードとしては,8 Ω を2個と,2.5 Ω を用意し, 8 Ω, 10.5 Ω, 16 Ω の組み合わせで使います. ダミーロードの正確な抵抗値は, 8.18 Ω, 10.70 Ω, 16.30 Ω でした.

シングル用のOPTでは,図44のような回路を組み, 抵抗の両端の電圧 Vr, トランスの1次側の電圧 Vp を測定します. Rs の正確な抵抗値は 3297 Ω でした. 1次インピーダンス計測の結果を,表2に示します. 1次側の巻線抵抗は 141.8 Ω,2次側の巻線抵抗は 0.68 Ω でした.

図 44: シングル用OPTのインピーダンス測定回路
\begin{figure}\input{figs/opts}
\end{figure}

表 2: シングル用OPTのインピーダンス測定結果
RL (Ω) Vr (V) Vp (V) i (mA) Zp (Ω)
8.18 1.715 1.313 0.5202 2524
10.70 1.558 1.514 0.4726 3204
16.30 1.315 1.831 0.3988 4591

プッシュプル用のOPTでは, 図44の回路で,Rs として 6.8 kΩ (正確な抵抗値は 6.79 kΩ)を使います. 1次インピーダンス計測の結果を,表3に示します. 1次側の巻線抵抗は 136.3 Ω,2次側の巻線抵抗は 0.34 Ω でした.

表 3: プッシュプル用OPTのインピーダンス測定結果
RL (Ω) Vr (V) Vp (V) i (mA) Zpp (Ω)
8.18 1.905 1.395 0.2806 4972
10.70 1.717 1.608 0.2529 6359
16.30 1.412 1.953 0.2080 9392
18.80 1.642 2.577 0.2418 10660


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Ayumi Nakabayashi
平成19年7月7日