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B.2 五極管のモデル

五極管のプレート特性は,スクリーングリッド(G2)電圧によって変わってきますが, データシートには限られたスクリーングリッド電圧の特性しか掲載されていないため, さまざまなスクリーングリッド電圧の情報が含まれている三極管接続の特性をベースとします. まず,三極管接続の特性より,三極管接続のモデルのパラメータを求めます. 三極管接続では Ep = Eg2 ですから,この状況のプレート電流が判明します. この電流を EpEg2 の大小関係によって適切に配分してやれば, 五極管のモデルを三極管接続したものと,三極管接続のモデルが一致します. プレート電圧とスクリーングリッド電圧では, スクリーングリッド電圧の影響のほうがはるかに大きいので, 一旦プレート電圧を無視して,スクリーングリッド電圧をプレート電圧とし, 三極管のモデルからカソード電流とグリッド電流を求めます.

この時点のカソード電流 Ik1 は,

Ik1 = $\displaystyle \cases{G \bigl(\frac{3-3\alpha}{2}\bigr)^a
\bigl\{\bigl(\frac{1}...
...)^b
\bigl(E_{gg}+\frac{E_{g2}}{\mu_m}\bigr)^{1.5}, & $E_{gg} > 0$ のとき\cr}
$ (B.32)
となります.

グリッド電流は,

Ig = xgGlimEg1.5fg(Ep) (B.33)
となります.

B.2.1 プレート電流とスクリーングリッド電流の和

五極管では,プレート電流とG2電流の和はほぼ一定となりますが, G2電圧に比べてプレート電圧が低い場合には,電流の合計が下がってきます. プレート電圧とG2電圧が等しいときのプレート電流とG2電流の和(G1にグリッド電流が流れない場合はカソード電流 Ik となる)を1としたとき, 任意のプレート電圧におけるカソード電流を表す関数を f (Ep, Eg2) とします. この関数を,

f (Ep, Eg2) = 1 - 0.4(e-$\scriptstyle {\frac{{15 E_p}}{{E_{g2}}}}$ - e-15) (B.34)
とします.

この関数の形状を,図B.6に示します. Ep = Eg2 のとき,この関数は 1 となり, Ep = 0 のとき,0.6 となります.

図 B.6: プレート電流とスクリーングリッド電流の和
\begin{figure}\input{figs/penmod_1}
\end{figure}

後で使うため,この関数を EpEg2 で偏微分した関数も求めておきます.

$\displaystyle {\frac{{\partial f(E_p,E_{g2})}}{{\partial E_p}}}$ = $\displaystyle {\frac{{0.4 \cdot 15}}{{E_{g2}}}}$e-$\scriptstyle {\frac{{15 E_p}}{{E_{g2}}}}$ (B.35)
$\displaystyle {\frac{{\partial f(E_p,E_{g2})}}{{\partial E_{g2}}}}$ = - $\displaystyle {\frac{{0.4 \cdot 15 E_p}}{{E_{g2}^2}}}$e-$\scriptstyle {\frac{{15 E_p}}{{E_{g2}}}}$ (B.36)

この時点のカソード電流 Ik2 は,

Ik2 = f (Ep, Eg2)(Ik1 - Ig) (B.37)
となります.

B.2.2 スクリーングリッド電流の分配比率

このカソード電流をプレートとG2に分配します. G2に分配する比率を g(Ep) という関数で表します.

g(Ep) = (1 - r)$\displaystyle \Bigl($1 - $\displaystyle {\frac{{E_p}}{{E_p+10}}}$$\displaystyle \Bigr)^{{1.5}}_{}$ + r (B.38)
ここで,r は, Ep = $ \infty$ の時のカソード電流に対するスクリーングリッド電流の配分比率です.

この関数の形状を,図B.7に示します.

図 B.7: スクリーングリッド電流の分配比率
\begin{figure}\input{figs/penmod_2}
\end{figure}
Ep = 0 のとき,この関数の値は 1 となり, Ep = $ \infty$ のとき,r となります.

この関数を用いて,スクリーングリッド電流は

Ig2' = g(Ep)Ik2 (B.39)
と表されますが,後ほどさらに修正されます.

この関数についても,Ep で微分した関数を求めておきます.

$\displaystyle {\frac{{\partial g(E_p)}}{{\partial E_p}}}$ = $\displaystyle {\frac{{-15(1-r)(1-\frac{E_p}{E_p+10})^{0.5}}}{{E_p^2+20E_p+100}}}$ (B.40)

ある Ep についての Ip, Ig2 から r を求めるには,

r = $\displaystyle {\frac{{\frac{I_{g2}}{I_p+I_{g2}} - (1 - \frac{E_p}{E_p+10})^{1.5}}}{{1 - (1 - \frac{E_p}{E_p+10})^{1.5}}}}$ (B.41)
を使います.

B.2.3 プレート内部抵抗

プレート電流は,プレート電圧が高くなると増えますが, プレート電圧とG2電圧が等しいときのプレート電流を1としたときの比率を関数 h(Ep, Eg2) で表します.

h(Ep, Eg2) = $\displaystyle {\frac{{E_p-E_a}}{{E_{g2}-E_a}}}$ (B.42)
ここで,Ea は真空管ごとに異なる定数です.

この関数の形状を,図B.8に示します.

図 B.8: プレート内部抵抗を表す関数
\begin{figure}\input{figs/penmod_3}
\end{figure}
Ep = Ea のとき,この関数は 0 となり, Ep = Eg2 のとき,1 となります.

この時点でのカソード電流は,次のようになります.

Ik3 = h(Ep, Eg2)Ik2 (B.43)

偏微分した結果は,

$\displaystyle {\frac{{\partial h(E_p,E_{g2})}}{{\partial E_p}}}$ = $\displaystyle {\frac{{1}}{{E_{g2}-E_a}}}$ (B.44)
$\displaystyle {\frac{{\partial h(E_p,E_{g2})}}{{\partial E_{g2}}}}$ = - $\displaystyle {\frac{{E_p-E_a}}{{(E_{g2}-E_a)^2}}}$ (B.45)

となります.

B.2.4 最終的なプレート電流・スクリーングリッド電流

前節のカソード電流から,プレート電流は,

Ik lim = (1 - xg)Glimmax(Ep, Eg2)1.5 (B.46)
Ik4 = min(Ik3, Ik lim) (B.47)
Ip = max{min(Ik4 - Ig2', Ip lim), 0} (B.48)

と表せます. スクリーングリッド電流は,

Ig2 = max(Ik4 - Ip, 0) (B.49)
となります.

B.2.5 三定数

三定数は,

gm = $\displaystyle {\frac{{\partial I_p}}{{\partial E_g}}}$ = $\displaystyle {\frac{{\frac{\partial (E_{gg}+\frac{E_{g2}}{\mu_c})^a}{\partial E_g}}}{{(E_{gg}+\frac{E_{g2}}{\mu_c})^a}}}$Ip = $\displaystyle {\frac{{a}}{{E_{gg}+\frac{E_{g2}}{\mu_c}}}}$Ip (B.50)
$\displaystyle {\frac{{1}}{{r_p}}}$ = $\displaystyle {\frac{{\partial I_p}}{{\partial E_p}}}$ = $\displaystyle \Bigl\{$$\displaystyle {\frac{{f'}}{{f}}}$ + $\displaystyle {\frac{{(h - g)'}}{{h - g}}}$$\displaystyle \Bigr\}$Ip (B.51)
gmg2 = $\displaystyle {\frac{{\partial I_{g2}}}{{\partial E_g}}}$ = $\displaystyle {\frac{{\frac{\partial (E_{gg}+\frac{E_{g2}}{\mu_c})^a}{\partial E_g}}}{{(E_{gg}+\frac{E_{g2}}{\mu_c})^a}}}$Ig2 = $\displaystyle {\frac{{a}}{{E_{gg}+\frac{E_{g2}}{\mu_c}}}}$Ig2 (B.52)
$\displaystyle {\frac{{1}}{{r_{g2}}}}$ = $\displaystyle {\frac{{\partial I_{g2}}}{{\partial E_{g2}}}}$  
  = Ig2$\displaystyle \Biggl[$$\displaystyle {\frac{{f'}}{{f}}}$ + $\displaystyle {\frac{{\frac{\partial \{(\frac{1}{\mu_c}-\frac{1}{\mu_m})E_{g2}\}^b}{\partial E_{g2}}}}{{\{(\frac{1}{\mu_c}-\frac{1}{\mu_m})E_{g2}\}^b}}}$ + $\displaystyle {\frac{{\frac{\partial (E_{gg}+\frac{E_{g2}}{\mu_c})^a}{\partial E_{g2}}}}{{(E_{gg}+\frac{E_{g2}}{\mu_c})^a}}}$$\displaystyle \Biggr]$  
  = Ig2$\displaystyle \Bigl($$\displaystyle {\frac{{f'}}{{f}}}$ + $\displaystyle {\frac{{b}}{{E_{g2}}}}$ + $\displaystyle {\frac{{a}}{{\mu_c E_{gg}+E_{g2}}}}$$\displaystyle \Bigr)$ (B.53)
μg1-g2' = $\displaystyle {\frac{{\partial E_{g2}}}{{\partial E_g}}}$$\displaystyle \Big\vert _{{I_{g2}=I_{g20}}}^{}$ = $\displaystyle {\frac{{\partial I_{g2}}}{{\partial E_g}}}$ . $\displaystyle {\frac{{\partial E_{g2}}}{{\partial I_{g2}}}}$ = gmg2rg2 (B.54)
$\displaystyle {\frac{{\partial I_p}}{{\partial E_{g2}}}}$ = Ip$\displaystyle \Bigl($$\displaystyle {\frac{{f'}}{{f}}}$ + $\displaystyle {\frac{{h'}}{{h-g}}}$ + $\displaystyle {\frac{{b}}{{E_{g2}}}}$ + $\displaystyle {\frac{{a}}{{\mu_c E_{gg}+E_{g2}}}}$$\displaystyle \Bigr)$ (B.55)
μg1-g2 = $\displaystyle {\frac{{\partial E_{g2}}}{{\partial E_g}}}$$\displaystyle \Big\vert _{{I_p=I_{p0}}}^{}$ = $\displaystyle {\frac{{\partial I_p}}{{\partial E_g}}}$ . $\displaystyle {\frac{{\partial E_{g2}}}{{\partial I_p}}}$ = gm$\displaystyle {\frac{{\partial E_{g2}}}{{\partial I_p}}}$  
  = $\displaystyle {\frac{{\frac{a}{E_{gg}+\frac{E_{g2}}{\mu_c}}}}{{\frac{f'}{f}+\frac{h'}{h-g}+\frac{b}{E_{g2}}+\frac{a}{\mu_c E_{gg}+E_{g2}}}}}$ (B.56)

となります.


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Ayumi Nakabayashi
平成19年6月28日