カソード接地の中域における等価回路は,図2.2になります.
中域では Ci, Co のインピーダンスが0と見なせるので, 等価回路では短絡されます. また,直流電圧源も短絡します. 真空管のP-K間は,交流電圧源と内部抵抗に置き換えられます. この等価回路より,出力電圧 eo と入力電圧 ei の関係は,eo = - μeg = - μei | (2.1) |
A | = | = - μ | (2.2) |
Zi | = | Rg | (2.3) |
出力インピーダンス Zo は, 入力を接地して,出力端子から見た内部抵抗のことで, 電圧源の内部抵抗は0なので, Zo は rp と RL の並列合成抵抗になります.
Zo = rp//RL | (2.4) |
A | = | -17.18064 = - 12.78395 | |
Zi | = | 470 [kΩ] | |
Zo | = | = 8.44502 [kΩ] |
SPICEで増幅度や入出力インピーダンスを直接求めるには tf コマンドが 使えますが,これは直流的な増幅度やインピーダンスを求めるため, このような交流用の回路の分析には適さないので, シミュレーション用に回路を一部変更します. 変更した回路を図2.3に示します. 数字はSPICEのネットリストのノード名です.
入力電圧はグリッドバイアスと共に直接 VI で与えます. こうすると,グリッドバイアス分の電流が RG を流れてしまいますが, それ以外の点では元の回路と動作は変わりません.
SPICEの入力ファイルは,次のようになります.
1 Common cathode voltage amplifier with 12AU7 2 .INCLUDE 12AU7.lib 3 X1 1 2 0 12AU7 4 RL 1 4 33k 5 VBB 4 0 200V 6 RG 2 0 470k 7 VI 2 0 DC -3.646829V AC 1V 8 .control 9 op 10 print v(1) v(2) i(vbb) 11 tf v(1) vi 12 print all 13 .endc 14 .END
真空管はサブ回路になっていて,
その実体は 12AU7.lib
というファイルに入っています.
それを利用するために,2行目の .INCLUDE によってファイルの内容を取り込み,
3行目のようにして使用します.
このサブ回路のノードは3つで,順にプレート,グリッド,カソードです.
8行目から13行目は,SPICEを対話的に使用する時のコマンドを ファイルに記述したもので, ここでは9行目の op により動作点解析を行い, 11行目の tf により伝達特性解析を行っています. 10行目と12行目では print により結果を画面に表示しています.
これらの行は,使用するSPICEのバージョンに合わせて変更する必要があります. たとえば,Circuit Makerの場合は,op や tf を SPICE 2のコマンド .OP および .TF に変更し, 結果の表示は print を使わずに, マウスで回路をクリックして,表示したいノードを選択します.
Linux上でこのファイルをシミュレートするには,
% spice3 com_k.cirのように入力します.
1 2 Circuit: Common cathode voltage amplifier with 12AU7 3 4 v(1) = 1.000000e+02 5 v(2) = -3.64683e+00 6 i(vbb) = -3.03030e-03 7 transfer_function = -1.27840e+01 8 output_impedance_at_v(1) = 8.445019e+03 9 vi#input_impedance = 4.700000e+054行目の v(1) は,ノード1の電圧すなわちプレート電圧 Ep です. 5行目の v(2) は,ノード2の電圧すなわちグリッド電圧 Eg です. 6行目の i(vbb) は,電源の + ノードから流れ込む電流で, この場合マイナスの値となっていますから, B電源から3.0303mAの電流が流れていることがわかります. 7行目が電圧増幅度 A, 8行目が出力インピーダンス Zo, 9行目が入力インピーダンス Zi です. どの値も第2.1.1節の数値とよく一致しています.