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3 コンデンサ,コイルに正弦波を流すと

3.1 コンデンサに正弦波を流す

コンデンサに初期位相が0の正弦波を加えたときに流れる電流を計算します. 式(4)に式(12)を代入すると,

iC = C$\displaystyle {\frac{{d V_m \sin(\omega t)}}{{d t}}}$ = Vm$\displaystyle \omega$C cos($\displaystyle \omega$t) (15)
となります2. これは,振幅が Vm$ \omega$C の余弦波です. 波形は,図12のようになります.
図 12: コンデンサに正弦波を加えたときの波形
\begin{figure}\input{figs/c_iv}
\end{figure}

オームの法則と同様にして, 抵抗値に相当するコンデンサのリアクタンス XC を計算します.

XC = $\displaystyle {\frac{{\vert v_C\vert}}{{\vert i_C\vert}}}$ = $\displaystyle {\frac{{V_m}}{{V_m \omega C}}}$ = $\displaystyle {\frac{{1}}{{\omega C}}}$ = $\displaystyle {\frac{{1}}{{2 \pi f C}}}$ (16)
となり,見慣れた式が出てきました. ちなみに,コンデンサの容量性リアクタンスの符号はマイナスなのですが, ここではとりあえず絶対値だけに注目しました.

余弦波は,時刻 0 で最大値をとり, これは正弦波が最大値をとる位相 90o の時刻より 90o 分先に進んでいるので, 電流の位相は,電圧よりも 90o 進んでいると言われます.

3.2 コイルに正弦波を流す

式(7)に式(12)を代入すると,

iL = $\displaystyle {\frac{{1}}{{L}}}$$\displaystyle \int$Vmsin($\displaystyle \omega$t) dt = - $\displaystyle {\frac{{V_m}}{{\omega L}}}$cos($\displaystyle \omega$t) (17)
となります. これは,振幅が Vm$ \omega$L の余弦波です(符号はマイナスです). すなわち,電流の位相は,電圧よりも 90o 遅れています. 波形は,図13のようになります.
図 13: コイルに正弦波を加えたときの波形
\begin{figure}\input{figs/l_iv}
\end{figure}

オームの法則と同様にして, 抵抗値に相当するコイルのリアクタンス XL を計算します.

XL = $\displaystyle {\frac{{\vert v_C\vert}}{{\vert i_C\vert}}}$ = $\displaystyle {\frac{{V_m \omega L}}{{V_m}}}$ = $\displaystyle \omega$L = 2$\displaystyle \pi$fL (18)
となり,見慣れた式が出てきました.

3.3 SPICEによるシミュレーション

正弦波の電圧源に,コンデンサとコイルをそれぞれ接続し, 流れる電流を測定します. 回路と結果は,図14のようになります.

scr_SIN_LC.png

図 14: コンデンサ,コイルに正弦波を加える
\begin{figure}.
%
\end{figure}

コンデンサに流れる電流を測定するのに, プローブをコンデンサの電流端子(?)に置けばよいように思われますが, CircuitMakerでこのようにすると,極性が逆になってしまうようです. そこで,電流制御電圧源 IcVs1 を使って,回路を流れている電流を電圧に変換し, 電圧の値として取り出しています. 変換の係数は1としていますから,1A の電流が 1V の電圧に変換されます.

コイルのほうはさらにやっかいになっています. 定常状態をいきなり作り出すために, 電圧の最大値になったところで,回路を閉じて電流を流します. そのためのタイマーが C2 で, Is1 から一定の電流を流し, コンデンサの電圧が 1V になったらスイッチ VcSW1 が閉じます. 電流は 1A, 容量が 0.25F なので,0.25秒後にスイッチが閉じます. VcSW1 のモデル SW1 は, 1V でスイッチが閉じ,そのときの抵抗は 1 μΩ となるように設定してあります(図15).

scr_SW.png

図 15: スイッチのパラメータの設定
\begin{figure}.
%
\end{figure}

コンデンサを流れる電流(B)は,電圧(A)よりも位相が 90o 進んでおり, コイルを流れる電流(C)は,電圧よりも位相が 90o 遅れていることがわかります.

コイルのほうは,電圧源 V2 ではなく電流源を使えば, この例のようにスイッチを使う必要はありません. ぜひ試してみてください. その場合,回路の中にごく小さな抵抗を入れるのを忘れないでください. また,コイルの場合は,プローブの電流端子を使えるので, IcVs2 を使う必要はありません. また,この回路のままで,スイッチの部分を取り除いたらどのような波形になるか, 試してみてください.

電流の大きさを計算してみましょう. コンデンサの容量は 0.16F ですから,1Hz におけるリアクタンス XC は,

XC = $\displaystyle {\frac{{1}}{{2 \pi f C}}}$ = $\displaystyle {\frac{{1}}{{2\pi \cdot 1 \cdot 0.16}}}$ $\displaystyle \approx$ 1 [Ω] (19)
したがって,電流(の振幅)は,

ICm = $\displaystyle {\frac{{V_m}}{{X_C}}}$ = $\displaystyle {\frac{{1}}{{1}}}$ = 1 [A] (20)
となります.

同様に,コイルのインダクタンスは 0.16H ですから,1Hz におけるリアクタンス XL は,

XL = 2$\displaystyle \pi$fL = 2$\displaystyle \pi$ . 1 . 0.16 $\displaystyle \approx$ 1 [Ω] (21)
したがって,電流(の振幅)は,

ILm = $\displaystyle {\frac{{V_m}}{{X_L}}}$ = $\displaystyle {\frac{{1}}{{1}}}$ = 1 [A] (22)
となります.

演習2

14の例で,周波数を 2Hz にしたり,0.5Hz にしたときに, 電流の大きさがどのようになるか予想し,シミュレーションで確かめましょう.
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Ayumi Nakabayashi
平成19年12月8日