三極管では,以下に述べる3つの定数で, ある点(図1.6では点Aとします)の特性を表します.
gmrp = = = μ | (1.5) |
プレート電流は,グリッド電圧とプレート電圧の関数であるといえます. すなわち,
Ip | = | Eg + Ep | (1.6) |
= | gmEg + Ep |
gmEg + Ep | = | 0 | |
gmrpEg | = | - Ep | |
gmrp | = | - = μ | (1.7) |
ここでは,12AU7を例にとりあげ, プレート特性図(図1.7)から三定数を求めてみます.
データシートには, Ep = 250 V, Eg = - 8.5 V のとき, μ = 17, rp = 7700 Ω, gm = 2200 μS という値が載っているので, これを確かめます.グラフから, Ip = 10.5329 mA と読みとれます. Rを使ってモデル(付録B)からこの値を求めるには, 次のように入力します.
> Ip(t12AU7, 250, -8.5) [1] 0.01053290 # 単位はAこの点をAとします.
グリッド電圧を Eg = - 8.5 V から -7.5 V に変化させても, プレート電流が Ip = 10.5329 mA のまま変わらないプレート電圧を求めます.
> uniroot(function(x) Ip(t12AU7, x, -7.5) - 10.5329e-3, c(200, 250))$root [1] 232.9815 # プレート電圧が200から250Vの間で探索この点は図のBです. これより,増幅率 μ は,
μ = = 17.0185 | (1.8) |
次に,プレート電圧を Ep = 250 V のまま, グリッド電圧を Eg = - 7.5 V に変えてプレート電流を求めます.
> Ip(t12AU7, 250, -7.5) [1] 0.01289177この点はCです. 相互コンダクタンス gm は,
gm = = 2.35887 mS | (1.9) |
点Bと点Cから,内部抵抗 rp を求めます.
rp = = 7.214683 kΩ | (1.10) |
ちなみに,モデルで計算した三定数は,
> mu(t12AU7, 250, -8.5) [1] 16.91149 > gm(t12AU7, 250, -8.5) [1] 0.002221544 # 単位はS(シーメンス) > rp(t12AU7, 250, -8.5) [1] 7612.495 # 単位はΩとなりますが,プレート特性図から求めた値は, グリッド電圧の変化として Eg = 1 V というかなり大きな値を使ったので, 正確な値と違ってきたのです. Eg = 0.01 V 程度にすると,4桁近くまでモデルの値と合います.